株式会社 タカマル鮮魚店 代表取締役 相原 正孝 Model04 株式会社 タカマル鮮魚店 代表取締役 相原 正孝 Model04

商機の鍵は顧客との掛け合いの中
に有り。鮮魚に大海原のような夢を
見出した裸一貫の実力派経営者

【プロフィール】相原 正孝(あいはら まさたか)

兵庫県尼崎市出身。中学生の頃に一家離散を経験する。俳優を志し上京した異色の経歴を持つ。その後、水産関係の会社へ従事、独立し2004年には株式会社鷹丸、2006年には株式会社タカマル鮮魚店を設立。日本の食文化の理解を深めてもらおうと、2013年にTakamaru fish center inc.USAを創立。

Q1 起業のきっかけは?

水産関係の会社でサラリーマンをやっていた時、知識がついてくると自分が勤める会社のやっている事にたくさん疑問が出てきました。それを上司に率直にぶつけたんです。そうしたら、「じゃあ自分でやってみれば?」と言われて。その頃は魚を市場でどうやったら買えるのかもわかっていましたし、魚の売り方や見せ方、そういうのもわかっていたので。しかも、自分は日本一魚が売れる男だと思っていました。とても自信があったんです。

Q2 事業継承して一番苦労したことは?

最初に直面したのは、パソコンが使えなかった事、そして会社を辞めたとき、生活費が1万ちょっとしか無かったという事です。まずは、親戚のお姉ちゃんから、いらないパソコンを譲ってもらって、それを徹夜で勉強しました。それで会社の登記をしたのは良いけれど、営業先が無い。どうすれば良いかと考えた末、その1万円を使ってとにかく手紙を書いたんです。カルフール、ドン・キホーテ、ダイエーなど、5社を選定して。「すげえ魚屋がいるけどどう?」って封書に入れて、代表宛で。それから2週間くらいしてから、当時ダイエーのCEOをしていた林文子さんから電話を頂きました。それが、今日のビジネスのスタートラインです。

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Q3 経営者と従業員の
違いや魅力は?

それはもう、『自由』って事です。それまでは、自由という言葉の意味をよくわかっていませんでしたが、初めてわかりました。従業員みんなに言うのですが、自由とは、みんなが想像するような、そんなものじゃないって。数年前、アメリカで居酒屋を開店した事があって、その時に、成功した人といっぱいお付き合いしたんです。名だたるメンバーと、毎晩のように飲みましたね。こういう世界もあるんだ、でっかい夢を掴めるんだ、自由ってこういう事なんだ、っていうのが、経営者の魅力です。

❶セブンパークアリオ柏店の様子。種類も豊富な新鮮な魚が販売 ❷レストランも兼ね備えており、平日でも満席になる人気ぶり。写真は北海道から直送された新鮮で絶品のいくら丼 ❸BGMとして店内に流れるのはお店のオリジナルラップ

Q4 挑戦しつづけられる理由は?

ふたつしか無いです。ひとつ目は、中学生の時に親に捨てられたことへの「怒り」です。そんな父親との再会は、20年近く前『父親が危篤だ』と電話がきたときでした。「こんな俺でもここまで来られたんだぞ」と見せたくて、社会人になって初めて買った車に乗って大阪まで会いに行きました。色々ありましたが、今では親に捨てられて、それが一番良かったと思っています。ふたつ目は「楽しさ」です。仕事はキツイところもあるので、それを前向きにやって行くためには、楽しくなきゃいけないじゃないですか。

Q5 御社の事業の魅力は?

恥ずかしくて言えないような事ですが、どこかで社会貢献ができればと思っていて。街中ではたくさんの魚屋が無くなっているじゃないですか。これは日本の文化が無くなっているのだと思っているんですね。よく、朝に買い物に来るおばちゃんが、カゴをふたつ持って、そこに魚を満タンに入れて行くんです。おそらく、何かの商売をされている方だと思うんですけど。その時に見せる、『うちはここで美味しい魚を買っているのよ』っていう誇らしげな顔。それを見ると、すごく嬉しいなと思いますね。

Q6 現在の事業ノウハウの基盤は
どこで培いましたか?

ノウハウを教えてくれたのは、お客さんですね。会社というのは、だいたいが『人件費を縮めろ!』とか『実入りを多くしろ!』『お金を残せ!』っていうじゃないですか。そこから得られるノウハウっていうのは、あまり無いんです。お店に立って、『いらっしゃい!』から始まって、この値段だったら興味を持ってもらえるな、とか、この色のマグロなら買ってもらえるな、この切り身の厚さじゃ興味を持ってもらえないんだな、という、絶妙な空気を感じ取って、それに対応して行く事が僕の商売の原点です。

Q7 地域とのつながり、意義は?

漁港など取引先が千葉に多いというのはあります。取引はテンポが大事です。「今だな」と思った時に買い、今は待ちだという時はとことん待つ、抜き差しのようなもの。うちは大卸と直接取引していますが、しっかりとした仕入れをするために、あえて〝付き合わない〞っていうのも大切なんです。大卸業者にとって良い人になる必要はなくて、お客さんにとって良い会社でありたいので、付き合いで仕入れるのではなく、あえて付き合わないで、しっかりとした仕入れをする姿勢を大切にしています。

Q8 千葉県で起業する魅力は?

普通の人は、東京が真ん中で六本木ヒルズに事務所を構えるんだけど、千葉はどこへでも手軽に行けるっていうのが、良いと思っています。地の利があります。そして、都会の中で家族と暮らすより、これくらいの土地で暮らす。仕事をする時は思いっ切りやるんですけど、休む時はホッとする。そんなところも魅力がありますね。

Q9 これから起業を考えている方に
メッセージをお願いします。

自分を信じる事です。もし、自信がなくなったら、もう清算する時ですよ。嘘でも良いから、自信を持ってという事を言いたいですね。あくびする時は、あくびして。寝 る時は寝て。仕事する時は仕事していいんです。どんな自分であれ、どんな事をやっても気に入ってくれる人はついて来てくれるし、そうでなければ何をやっても誰も来ない。だから難しく考えずに、自分に自信を持て、と。絶対間違いないですから。

好きな漢字は?

「 義 」
会社理念です。社員にも伝えていきたい文字であり大事にしています。

影響を受けた本、おすすめの本は?

「経営者になるためのノート」/柳井正 著
経営について書いてあるほかに書き込む部分があるので、そこに気づいたことなどを書きまくっていますね。 「武士道」/新渡戸稲造 著
武士道は昔から何回も繰り返し読んでいますね。あとは料理のレシピ本を見る事が多いですね。

オンとオフの切り分け方は?

やっぱり睡眠が欲しいですね。仕事をしているときは睡眠時間が3時間ぐらいなので休みの時は2回寝ていますね。ご飯を食べてからお腹いっぱいで寝るんですよ。それが休みの時の幸せですね。あとはできるだけ家族と過ごすようにしています。

千葉で注目している起業家、経営者は?

いません。今は、自分の経営する会社の仕事で頭の中がいっぱいです。ですが、これから先、今一緒に働いている部下を、現場をよく知る経営者として育てていきたいと思っています。