“千葉の醤油屋”から“世界の食品企業”へ
創業170年の歴史と絶え間ない革新で
業界に新風を巻き起こすゲーム・チェンジャー。

ちば醤油株式会社 代表取締役社長  飯田 恭介

1854年(嘉永7年)に小見川で創業した株式会社大村屋と1864年(元治元年)に旭で創業した株式会社飯田本店が1964年(昭和39年)に合併し、ちば醤油株式会社が誕生。1957年(昭和32年)、飯田本店の長男として生まれ、大学卒業後、アパレル業界に就職。その後、米国での語学留学を経て30歳を前にちば醤油株式会社に入社し、代表取締役社長就任は2016年。厳選された国産原料を使用した約170年続く伝承の木桶仕込み「下総醤油」は、不動の人気商品となる。さらにPBやOEMの開発にも精力的に取り組み、革新を続けてる。

Q1 事業承継のきっかけは?

 私は元治元年に千葉県旭市で創業した飯田本店の長男として生まれました。自宅そのものが醤油屋で、従業員も友達のような環境で育ちましたから、潜在的に家業を継ぐという意識はあったと思います。大学卒業後、ジーパン販売を中心としたアパレル会社に就職し、商品サンプルを持ってニューヨークに渡る等の経験を積み、3年程勤めました。急成長の会社で良い体験ができました。その後、今後のビジネスに役立つだろうと米国に渡り語学を1年学び、30歳手前でこの会社に入社しました。営業を中心にやってきましたが、並行して製品開発にも注力してきました。そして時の流れもあり、世代交代で2016年に社長に就任しました。

Q2 一番苦労したことは?

 思っていたような業績を実現出来ていない現在です。社長就任時に掲げた、「従業員の待遇を福利厚生含め地方公務員並みにする」という約束は、未だ実現出来ていません。社長就任から一昨年までは、従来の多種多様な商品や容器を大胆にカットし、利益の出やすい商品群や販路に絞る事で、会社の財務状況も良くなり待遇の改善を図る事が出来ました。しかしコロナ下で、飲食店が多大な影響を受けましたので、当然当社にも影響がありました。飲食店に対しての業績は下降し、全体ではやや減収減益でした。さらに2021年はかなりダウンする見込みです。経営者として、ウィズコロナ社会で新たな飯の種を創るべく努力中です。

Q3 起業家・経営者と雇用される生き方の違いや魅力は何ですか?

 経営者となった今、自分の差配で、自分も含めて全従業員の生活に影響が出ることは責任重大で、プレッシャーはあります。一方で、夢を見られるという事は魅力的です。ビジョンを思い描き、それが新しいチャレンジに繋がっています。コロナ下前までは、取引先の人気ラーメン店の海外出店に伴って海外輸出も伸びましたし、ご縁が広がり当社と取引したいとお客様からメールをいただく事もあります。よもや当社が、海外から注文のメールが入り、営業マンがロスやハワイ、ベトナム等に商談に行く時代が来るとは考えられませんでしたから、地元担当の営業マンから海外担当になった営業マン本人が驚いています。従業員と共に夢を見られる事も経営者の魅力です。

Q4 その上で、挑戦しつづけられる理由は何ですか?

 「適者生存」の業界です。挑戦し続けないと会社が潰れてしまいますし、従業員が路頭に迷うような事があってはならない。そういった責任感があります。創業170年という歴史の中で、私が担当しているのはそのワンパートだと思っていますから、これまでの歴史を繋いでいかなければなりません。私がつくった会社ではなく、ご先祖様や当社を支えてきてくれた大先輩の皆さんが築き上げてきた会社ですので、中継ぎ役として当社を良い状態にして次の世代へバトンを引き継いでいく覚悟と責任を持っています。それが挑戦し続けられる理由かもしれません。

【事業内容1】
醤油(しょうゆ)を中心に、たれ、つゆなどの調味料を製造。お客様のご要望にお応えする、お客様専用のラーメンのかえし、つゆ、たれなど、PB・OEM製品の開発も重要な事業です。

【事業内容2】
江戸時代後期より150年以上に渡り大事に使い続けてきた木桶。ちば醤油不動の人気商品「下総醤油」はここで仕込まれます。

最初は失敗することもあると思いますが、
挑戦し続ければ必ず芽は出ます。

Q5 現在実施されている事業の魅力は何ですか?

 当社は醤油屋の中では中小規模ではありますが、大量生産型の製造ラインを有しています。一方で、値段ではなく、価値で勝負する商品もあります。自社ブランドの伝承木桶仕込み「下総醤油」です。創業以来使い続けている木桶で、原料も国産小麦や大豆にこだわって醸造しています。生産量は少ないですが、その価値を評価していただいている事は嬉しいですね。今後は開発陣と共に一層勉強し、「下総醤油」を上回る商品開発にも力を注いでいきたいと考えています。また、BtoB向けの製品やPB・OEMに対しては、ニーズに沿ったものを素早く作り、ご期待以上の商品を提供する事を心がけています。

Q6 現在の事業のノウハウの基盤は何ですか?

 経験とその蓄積です。当社にとって、取引先専用のラーメンのかえし、つゆ、たれなど、PB・OEMの開発は重要な事業であり、取引先様のご要望にお応えして一から開発しています。特に新しい取引の場合などは、取引先様から色々な事を教えていただきます。そうした経験を積み重ねていくことで、「次はこうしよう」と前進する事が出来ます。取引先様からのフィードバックをいただきながら、良い結果が出て初めてそれがノウハウになっていきます。

Q7 地域とのつながりはありますか?その意義は何ですか?

 当社には、“事業を継続発展させ富と雇用を創造し、地域経済の牽引者となり、社会のために貢献しなければならない”という社会的責任と経営哲学の一つの理念があります。地域貢献のためには雇用を創出し、従業員が生活していける場所をつくるというのが一番だと思っています。当社の従業員も多くが地元出身ですし、お昼休みには自宅で食事をとる人もいるくらいです(笑)。また、これまでも地域のお祭りに参加する等、地域に根差した企業として地元のために活動しています。

Q8 ちば起業の魅力は何ですか?

 大消費地の東京に近い点が大きな魅力ですね。千葉はご存知の通り、昔から醤油製造の大手企業がひしめく醤油王国です。温暖な気候で大豆や小麦が穫れ、醤油造りに適している土地だったという事もその所以ではありますが、大消費地の江戸に近い事もその理由でした。利根川を利用して船で運搬していたという記録も残っていますから、流通においても当時から有利だったんですね。現在でも東京に近く、製造・生産して商品を運搬するにはコストも抑えられるので魅力的な土地だと思います。

Q9 これから起業を考えている方にメッセージをお願いします。

 「いつまでにこうする」というビジョンをノートに書いて持っていると、不思議な事に、ビジョンを叶える足掛かりとなる人に出会う事があります。最初は失敗する事もあると思いますが、挑戦し続ければ必ず芽は出ます。私は失敗の方が多いので偉そうな事は言えませんが、思い描いたビジョンとは違う形であれ、芽は出てくるという体験を積み重ねてきました。失敗してしまったら相当ショックですけど、その失敗は忘れて、「次に」という気持ちで前を向くしかないですから。

Q10 今後の展望、ビジョンをお聞かせください。

 日本は少子高齢化が進みマーケットも狭まっている反面、世界では日本食が人気で、海外の本醸造の醤油は毎年約10%ずつボリュームを伸ばしています。2030年には世界に認められる中小企業にしていきたいと考えています。また、先述した通り、千葉は醤油王国で大手2社がすぐそばにありますので張り合いがありますし、規模や売上額で肩を並べるのは難しいとしても、価値では肩を並べる企業にしていきたいです。そして、業績を伸ばし、全従業員の物心両面の充実した職場を作らねばなりません。今後は、「下総醤油」を上回るような魅力的な自社商品を開発し、価値の部分で世の中に受け入れられるようになっていきたいです。
会社名 ちば醤油株式会社
電話番号 0478-80-7177
現在の年商 30億8,000万円
従業員数 正社員90名、準社員70名
業 種 メーカー(食品)
事業概要 醤油醸造(「下総醤油」等)、加工調味料の製造販売
所在地 〒289-0337 千葉県香取市木内1208
H P https://www.chibashoyu.com/

好きな漢字は?

「生」  私のモットーに“一日一生”があります。生きるは英語で、natural、life、live、born、to make等の多くの意味があり、未来に向かって進む躍動感を感じます。

影響を受けた本は?

渋沢栄一/渋沢秀雄 著
京セラフィロソフィ/稲盛和夫 著
生きる/小野田 寛郎 著

オンとオフの切り替え方は?

オンとオフはないですね。打ち込める趣味があればいいなと思います。

千葉で注目している起業家、経営者は?

●株式会社恋する豚研究所 代表取締役 飯田大輔さん
●株式会社ホソヤコーポレーション 代表取締役社長 細谷幸平さん
●株式会社成田デンタル 代表取締役 石川典男さん
●社会福祉法人ロザリオの聖母会 旭市中央地区地域包括支援センター センター長 井上創さん