大澤 成行
大澤 成行

子ども時代に好きだったことで起業を
それがモチベーション継続のカギとなる

1965年に先代が創業。1994年から住宅販売事業に参入し、その後、注文住宅・リフォーム事業などを軸に成長する。現在は、ママに優しい住まいを提案する「mamanの家」やお洒落なライフスタイルを創造する「TRIBECA」など複数の注文住宅ブランドを展開するほか、花見川区の本社敷地内にあるインテリアショップ「CLASSICA」をはじめ、カフェ、雑貨店、有料老人ホーム、保育園、美容クリニック、メガソーラー発電施設、近年はモンゴルにも事業を展開、多彩な事業を行っている。

<プロフィール>大澤 成行

1965年、大阪府出身。同志社大学経済学部を卒業後、ニューヨーク大学へ留学。1989年、株式会社トミオ入社後は建築実務全般を経験するとともに一級建築施工管理技士・一級土木施工管理技士を取得。1994年から始めた住宅事業で手腕を発揮し98年に事業承継、代表取締役に就任する。5年ほど前から異業種への参入も始め、二級建築士・宅地建物取引主任者はもとより訪問介議員二級・福祉用具専門相談員・社会福祉主事任用資格などの資格を有している。

Q1 承継のきっかけは?

1989年にニューヨークから帰国してすぐ入社し、最初は現場監督などをやっていました。バブル崩壊の影響もあり、事業の方向転換を迫られたときに住宅事業の立ち上げを任されたのが入社4年目です。それまでBtoB一本でやってきたのをBtoCにシフトさせようと。事業を始めて3年目で既存事業を上回るほどに成長し、33歳のときに事業を承継しました。理由は単純です。父がトミオを創業したのが33歳のときで、「お前も33歳になったことだし」というひと言がきっかけでした。

Q2 承継して一番苦労したことは?

経営者の苦労は人と金、このふたつです。売上が良くても人材が育たないのでは良い会社とは言えないわけで。自分自身や会社が成長していくと、問題も大きくなりますがふたつ以外は、些細な問題かな…そりゃあ景気の波や業界の変化などで青ざめることもありますが、今振り返って考えると苦労とは感じなかったです。

Q3 経営者と雇用される側の違いや魅力は?

 経営者は自由で責任があります。自分の発想に従いいろんな事にチャレンジしていけます。従業員はそのチャレンジを支える立場かな。ミスをしても最終的には経営者が責任を持ちます。だから経営者は結果がすべてです。失敗するイコール借金を抱え、社会的責任を負わされて。でもそれを楽しめるのが経営者だと思います。

Q4 挑戦しつづけられる理由は?

 好きだからです。ここ5年ほどで住宅以外に老人ホームや保育園、ソーラー発電所など大幅に事業を拡大してきました。なぜかといえば、僕自身が興味を持ったから。日々いろんな方と出会い「この方と一緒に事業を始めたら面白いかも」ってシナジー的な事を考えたりもしますが、やはり僕自身がその分野に興味を持ち次第に好きになっていくからですね。
以前、身近な方が亡くなったとき、雨のなかの葬儀だったのですが500人くらいの人が集まりましてね。人間の評価って生きているときじゃなく、死んだときなのかもと感じました。好きな事業をやって最後に大勢の人に残念がってもらえる人生なら最高ですね。

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これからは10人の社長を育てていきたいと語る大澤社長

Q5 御社の事業の魅力は?

 お客様に求められているって実感できる事です。昔、安売り住宅をやっていた頃に、うちより安いハウスメーカーが参入してきたら売上高が3割減った事があります。それが自分のなかで転機になったというか、「安売り市場ってどうなの?」と疑問に思っていたのが実際に結果を見せつけられて。高くても選ばれる会社…お客様からしたら、なくてはならない存在になろうと決めました。それが2008年頃ですね。
今でも打ち合わせや着工式などで度々お客様と会います。家が完成してから「この家って素敵に仕上がってますか?」と評価を求められることがあります。私どもと一緒に作りあげたという思いが強いからでしょうね。「いいですよ!」って言うと、その瞬間からお客様にとって〝自慢の家〟になるんです。お客様のそばにいて、完成するまで一緒に考え悩むのが我々の仕事だと思っています。

Q6現在の事業ノウハウの基盤はどこで培いましたか?

 住宅事業を始めた当時はFCに加盟していたので、本部からノウハウを学びました。それに同業の経営者から教わったりと。今は基本的にネットと本を活用して自分で調べます。ネットでその分野について広くチェックし、関連書籍を購入してより深い情報を仕入れ、その業界の人に会い話を聞き、集中してノウハウを蓄積しています。だから僕の机とか本棚を見ると、次はどんな事業をやろうとしているかが分かります。ちなみに今はヤギの飼い方のハウツー本が僕の机にあります。ソーラー発電所に生えている草をヤギたちに食べてもらおうと思いましてね。機械で刈る方が簡単だけど、ヤギを飼育して乳やチーズが作れたらおもしろいと思いませんか?
介護事業に取り掛かるときにはヘルパーの資格を取り、今回のヤギでも家畜商の免許を取りました。現場のスタッフと同じ目線で話ができないと、現場の悩みが分からないですからね。

Q7 地域とのつながり、意義は?

 千葉は自分が事業をスタートした場所なので思い入れもあるし、お客様も沢山いらっしゃいます。千葉の方々はみんな優しいですから、商売をするにも人付き合いするにもいい環境だと思います。

Q8 千葉県で起業する魅力は?

マーケットが大きいから何でもトライできる、やりたいことがスタートできる場所だと思います。行政のサポートも厚いですからね。ロケーション的にも、千葉で起業していずれは東京進出を目指す事も可能で…でもみんな千葉の居心地が良すぎて残っちゃいますけどね(笑)。

Q9 これから起業を考えている方にメッセージをお願いします。

 よく起業したいという方から相談を受けますが、なかには事業内容も決まらないまま「とにかく起業したい!」という方も多いです。そんなとき僕は、「子どものときに何が好きだったの」って聞きます。起業と言うと、たいそうなビジネスモデルを考えなきゃってイメージがありますが、僕はそう思いません。自分が興味のある事、つまり好きな事ってモチベーションに繋がりますからね。誰がやるでもない、自分自身が好きでやる事ですから。私が住宅というモノ作りの仕事を選んだのも、小さい頃にプラモデル作りが好きだったのが原点ですから。

好きな漢字は?

父からもらった名前の一文字でもあります。中途半端ではなく成し遂げることの意義を感じる文字です。

影響を受けた本、おすすめの本は?

1.『海賊とよばれた男』/百田尚樹 著
昨年この本に出合い、絶対に海外進出しようと思いました。戦前のアジアは国境という概念がなく、敗戦の影響で日本が閉じ込められてしまったのだと。日本人として勇気と誇りを持ち、海外で勝負しなくてはと感じました。
2.『スモールビジネス・マーケティング』/岩崎邦彦 著
3.『営業マンは断ることを覚えなさい』/石原明 著

千葉で注目している起業家、経営者は?

「株式会社寺田本家」の寺田優君です。室町時代から続く由緒ある酒蔵の三十数代で、日本酒を若い人たちにリーチさせていくために奮闘しています。そうやって走り続ける姿が素敵だなと思うのは、寺田君のほかに「あいよ農場」の志野佑介君や「食育ネット株式会社」の浅野美希さんです。

オンとオフの切り分け方は?

仕事で海外に行くのですが、日本語が聞こえてこない環境に身を置くと自問自答する時間が増えます。日本と世界、自分と他人の位置関係を見つめ直す事ができ、帰りの飛行機でいろいろ考えたものを整理するという作業がとても有意義ですね。

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