千葉の地から世界へ。チャレンジ精神と柔軟な対応力でグローバルにビジネスを展開。偏光レンズメーカーのパイオニア。

株式会社オーケー光学 代表取締役 大谷 京子(おおたに きょうこ)

1977年に父親が前身である大谷レンズ製作所を設立。その後、規模を拡大しながら、株式会社オーケー光学に社名変更。創業者である父親の急逝により、一緒に働いていた母親が継承したが、それをサポートする意味で、当時の就職先を辞めて入社を決意。その後、2003年に社長に就任。以後、主力取引先となる海外との直接貿易業務を始める他、同業種の国内主力は関西に集まる中、40年以上関東におけるパイオニアとして常に「挑戦」「前進」しつづける。今年は、自社製の偏光レンズを使用した、県内プロ球団のオフィシャルサングラスも販売。

Q1 事業承継のきっかけは?

 平成15年に、母である前代表から会社を引き継ぎました。実は、創業者で強力なリーダーシップのもと会社を経営していた父・紀久雄が、ある日突然、くも膜下出血で倒れて亡くなってしまったんです。一時的に母が代表に就任しましたが、当社のお得意様は海外や関西がメイン。高度な駆け引きが求められる中で、母は次第に精神的に追い詰められていったように見えました。そんな母と会社を守るために私ができること、それは私が代表に就くということだと考えました。周囲には「嫁にいかなくなるから」と反対されましたけどね(笑)。最終的に、私の熱意を母も認めてくれました。

Q2 一番苦労したことは?

 「従業員の雇用をどうしたらいいのか」ということです。私が事業承継する少し前、米国で同時多発テロが発生しました。次の日、出社するとすべての注文が止まっていたんです。原材料は入荷できない、製品は輸出できない。1ヵ月くらいそんな状況が続きました。そうなった時でも従業員は出社して来ますが、製造業ですから注文が入らないと仕事がありません。そういう経営的な打撃を受けた直後の代表就任だったので、従業員の雇用については大変悩みました。同時に、世界で起きた出来事に、こんなに経営が左右されるんだということを実感しました。
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Q3 起業家・経営者と雇用される生き方の違いや魅力は何ですか?

 「辞める」という選択肢があるかどうかだと思います。タイプは違うものの「責任」はそれぞれあると思います。ただ、従業員は「会社を辞める」という選択肢を持っています。一方で、経営者は会社を辞めることはできない。従業員の生活を守るため、取引先に迷惑をかけないため、会社と共に歩まなければならない。そういうところが違いではないでしょうか。

【事業内容1】
昨年夏に稼働を始めた稲毛工場

【事業内容2】
アメリカブランドの「クリックリーダー(老眼鏡)」は、国内の総販売元をやっており芸能人やモデルも使用

千葉から世界を相手にできるという面白さがあるんです。 この状況を楽しんでいます。

Q4 その上で、挑戦しつづけられる理由は何ですか?

 大前提として、父の立ち上げた会社を無くす訳にはいかないという想いがあります。父が亡くなった当時、勤めていた旅行会社を退職し、父の会社を存続させるために当社に入社しました。その時から「私がこの会社を守る」という覚悟でここまで続けています。しかし、いつまでも「父の会社」ではいけない。自分が経営する以上は、会社の未来を開拓するように、偏光レンズの業界だけでなく新たな業界への門戸を叩いていく等、挑戦していきたいと考えています。

Q5 現在実施されている事業の魅力は何ですか?

 この規模でありながらインターナショナルな取引ができることが魅力なんじゃないかな。当社の取引の基本はサングラスのレンズを作って輸出することです。海外の取引先との商談は、サングラスの展示会開催地となるニューヨークやラスベガス、フランス等に足を運び行います。最近は、大手IT企業等、海外の他業界との取引が増えてきています。会社が千葉にあっても世界を相手にできるっていう面白さがありますね。逆に、ライバルが中国企業という課題もあります。世界の流行や情勢、色々なことにアンテナを張っていないといけないので大変ですが、今はこの状況を楽しんでいます。

Q6 現在の事業のノウハウの基盤は何ですか?

 対応力ですね。例えば、お客様からクレームを言われた時点で、きちんと調査をし、原因を見つけ、迅速に対処する。そして、改善点を提示する。何も言われなくても日本の企業は改善していきますよね。その対応力が他国の企業との差別化に繋がっていると思います。特に当社は、女性40人、男性5人というバランスで、言わば“女性脳”を持った会社なんです。縦割り的な「確認します」の連続ではなく、「これいい?すぐ対応しよう」という柔軟さがあります。当社の事業基盤は、その“女性脳”にあると思っています。

Q7 地域とのつながりはありますか?その意義は何ですか?

 地域との繋がりという意味では雇用が大きいですね。創業時から、地元の方、特に女性が多く働いています。また私も含めてですが、千葉県民は、温暖な気候もあってか楽天的な県民性であると思いますし、他県の方からも言われたりします。今まで、あらゆる逆境を社員たちと一緒に笑顔で乗り越えられたのは、大変な時でもいい意味で呑気に構えている、その県民性に助けられていると感じます(笑)。

Q8 ちば起業の魅力は何ですか?

 私どもの業界に限った話になってしまうのですが、千葉に会社があっていいことは、業界の人に会わなくていいことです(笑)。この業界の国内の主力は関西や北陸なので、千葉にある当社はある意味「よそ者」なんですね。業界の輪の中に入れない。でも、輪の中にいることで大変なことも多いんです。例えば、情報の漏洩が挙げられます。業界から見れば「遠方」である千葉の企業に発注することで情報が漏れにくいので、あえて当社に発注するといったケースが多々あります。

Q9 これから起業を考えている方にメッセージをお願いします。

 起業を目指す人は何事にもチャレンジした方がいいと思います。ただ、会社を経営するということは必ず誰かに影響が及ぶということを忘れてはいけません。私のように父が突然亡くなってしまうと、会社を存続させるにしても会社を畳むにしても、従業員や家族、取引先等に影響が及びます。だから責任を持って起業して欲しいんです。継いだ身としては「きちんとそこまで考えてやってよ」って言いたいですから(笑)。私自身も、その点を常に意識して経営にあたっています。
会社名 株式会社オーケー光学
電話番号 043-215-0830
現在の年商 5億5,000万円
従業員数 45名(女性 40名:男性 5名)
業 種 メーカー(製造)
事業概要 ■レンズ事業・加工事業
偏光レンズ全般の製造・販売/レンズ球面加工(プラスチック製レンズ全般)/レンズ目型加工/前掛けサングラス組み立て/サングラスフレームへのレンズはめ込み/パット印刷/前掛けサングラスOEM加工/3D立体用グラス・レンズ
■完成品販売事業
前掛サングラス・サングラス・老眼鏡の販売・CliC商品の販売
所在地 千葉県千葉市花見川区宇那谷町 1504-9
H P http://www.ohkei.co.jp/

好きな漢字は?

「笑」  みんなが私を見て笑うし、私も辛いことを笑い話にしたい。「笑う門には福来る」、笑うところには人が集まると思っています。

影響を受けた本は?

上杉鷹山〈上〉〈下〉/童門冬二 著
沈まぬ太陽/山崎豊子 著
バッタを倒しにアフリカへ/前野ウルド浩太郎 著

オンとオフの切り替え方は?

オンもオフもない(笑)!プライベートも「これは仕事にどう繋がるか?」と常に考えています。

千葉で注目している起業家、経営者は?

株式会社三協リール/代表取締役 三木健太郎 氏
株式会社秋葉牧場(成田ゆめ牧場)/代表取締役社長 秋葉秀威 氏