スズキ機工 株式会社 代表取締役 鈴木 豊 Model08 スズキ機工 株式会社 代表取締役 鈴木 豊 Model08

事業環境をドラスティックに
変化・変貌させ、経営体質の
安定化を推進した経営者。

【プロフィール】鈴木 豊(すずき ゆたか)

1969年生まれ、松戸市出身。食品原料輸入販売商社勤務を経て、1997年に父親が創業したスズキ機工株式会社に入社、2007年に同社の代表取締役に就任。「ベルハンマー戦略」と呼ばれる、ランチェスター戦略に基づく強者・弱者の戦い方を、それぞれの持つ商品の性質ごとに使い分ける、同氏独自の戦略で大幅に業績を伸ばす。

Q1 事業継承のきっかけは?

大学卒業後、日本橋の食品原料の輸入販売商社の営業マンとして4年ほど勤めていました。父の創った会社は18リットル缶の製造メーカーの保全業務を事業とした会社だったのですが、バブルが弾けて業績悪化に陥った1997年に父から「これから何とかやって行きたい。頑張るから力を貸して欲しい」と招聘され入社。10年後の2007年に代表取締役に就任しました。

Q2 事業継承して一番苦労したことは?

入社後は前職のコネクションを活かし、食品製造関係の機械製造やメンテナンス分野の新規開拓を行いました。衰退していった18リットル缶製造機械製造から食品機械製造へと事業転換しましたが、売上の伸びも芳しくなく、収益もまともに出せない様な状態でした。資金繰りも苦しく、従業員の定着率が低い等、問題と常に背中合わせの状態で代表になりました。就任後3・4年の収支はトントンまたは赤字で、お客さんの所を駆け回って「何でもやります」といった時期が長く続きました。寝る間も惜しんで働いていた時期だったので、勉強のため経営指南の本を読むのも風呂の中に入っている時間しかなかったですね。

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Q3 経営者と従業員の
違いや魅力は?

経営者は良くも悪くも、すべての決定者であり最終責任者だということ。そういった形を背負って生きて行けるということを、辛いと思うか、それとも魅力と思えるか。自分は魅力と思ってやっています。弊社も限られた資源の中、効率良く自らの事業環境を劇的に変えて、力強く変化する事ができました。経営で一番大事なのは、「今、結果を出す事ではなく環境が変化してもしなやかに対応できる組織を育成・運営出来る事」そんな事を考えて実行出来るのも経営者の魅力だと思います。

❶オリジナル製品の潤滑剤「LSベルハンマー」❷展示会等にも出展❸2017年8月には「ガイアの夜明け」に出演。過去には「がっちりマンデー」や「ワールドビジネスサテライト」でも紹介され注目を集めている

Q4 挑戦しつづけられる理由は?

経営計画書にも書きましたが、お金の為だけではなく、集う社員が自分の会社を信じ、彼らがやりがいを持って仕事ができること。そして家族と安心した生活がおくれることを支えてあげるというのは、経営者の義務なんです。そして義務とはいえ、それに向かって全力で走っている事こそが原動力なのかもしれませんね、本当に。

Q5 御社の事業の魅力は?

ランチェスター戦略でいう弱者と強者の戦略を、商品やサービスによって使い分けている事です。対応エリアを絞った地域密着の事業運営は典型的な弱者の戦略。そこから顧客満足度を高め、現場での生の声を吸収し新商品・サービスを生み出しています。その新商品の販売手法は、広域エリアで広告宣伝費を大量投下して大量の受注処理も行う強者の戦略そのものです。それらふたつの戦いを住み分けて事業展開出来ているという所が、弊社の魅力であり強さであると思います。また、IT環境の発展に伴い、SNS等の相互情報発信プラットホームを最大限活用してプロモーションに活かす取り組みも活発に行っています。このようなダイナミックな動きが取れる事業環境下は、技術力・商品開発力がある中小企業にとって、この20年の中で最高の事業環境であると感じています。

Q6 現在の事業ノウハウの基盤は
どこで培いましたか?

経営計画書を作成して仕事に落とし込んでいき、改善点を徹底的に分析して、「エリアの絞り込み、人・時間という経営資源を集中投入」という事に注力しました。その結果、様々な改善効果が表れ、収益構造も改善しました。これは大きな戦略転換であり事業の質を高めた事になりました。またエリアを絞り込む事でお客様との関係が密になり、商品やサービスを作るために本当に必要な「生の情報」を得る事が出来て、一般的な市場でも受入れられる商品やサービスに転化する事が出来たのです。

Q7 地域とのつながり、意義は?

現在の平和な環境って当たり前ではありません。それは警察、消防、町内会の自警団等、脈々と積み上げられたたくさんの人の努力があって今の環境があるのです。弊社では旧工場を障がい者の作業施設として貸して、彼らの作業環境を改善することで作業の付加価値を高めるという事を行っていますが、そういった事を国ではなく、地域で誰かが、少しずつでも行う事が必要です。個人も法人も、できることをやって、積み重なっていくと全体が変わると思います。

Q8 千葉県で起業する魅力は?

「工業装置のメンテナンスは、会社から1時間以内の範囲に限る」という戦略が取れたのは首都圏だったから。これが地方都市での同一条件下であれば、相当厳しいものになったと思います。千葉は首都圏の中で人口が多く、工業団地や製造部門も結構多いので、立地のメリットは絶対にあると断言出来ます。

Q9 これから起業を考えている方に
メッセージをお願いします。

「やった後悔よりも、やらない後悔の方が深く残る」という、ある経営者の言葉があるのですが、判断に迷う時には、その言葉を見返して「ヤバイかもしれないけど、とりあえずやってみよう」と言うんです。今までも色々な事に挑戦してきましたが、全てやったことのとないことで新しく挑んだ事ばかりなんです。深く考えて思い悩むのはいいんだけど、最後は決意なりそういったものを持って、決断する。そういった形で挑んで欲しいと思います。

好きな漢字は?

「 挑 」
「想像から創造へ」をテーマにモノ作りの可能性に挑むという社風にもある「挑」という文字です。挑むという文化は社員に徹底しています。

影響を受けた本、おすすめの本は?

「日本でいちばん大切にしたい会社」/坂本光司 著
「ドロくさいけど必ず結果が出る! 経営計画のつくり方」/古田土満 著

影響を受けたのは坂本先生と古田土先生の作品ですね。特に古田土先生の著作は最初に読んで参考にしたのできっかけとなった本ですね。

オンとオフの切り分け方は?

会社では物を探して仕事をしてはダメだと、いらない物を捨てたり、整理整頓を徹底しているのですが、家では妻からタンスの開けた引出しすら閉められないと言われています。そういった面ではオンとオフがしっかりしているのかもしれませんね。

千葉で注目している起業家、経営者は?

そろばん教室を展開している株式会社イシドの沼田社長です。子供の教育に対してフォーカスを当てたそろばんというアイテムを通じた指導が高い評価を受けている事は尊敬に値します。