株式会社 ベジフルファーム 代表取締役 田中 健二 Model09 株式会社 ベジフルファーム 代表取締役 田中 健二 Model09

仲卸しから生産者へと逆転の発想。
新しいカタチを提唱・実行する
革新的農業経営者。

【プロフィール】田中 健二(たなか けんじ)

1978年生まれ、千葉県松戸市出身。元暴走族の総長・元ボクサー・元DJという異色の経歴の持ち主ながら、18歳で農業関連の業務に従事。その時の実体験に基づき、2012年、農業生産法人としての株式会社ベジフルファームを創業。著書には「組織は人」「ヤンキー村の農業革命」などがある。

Q1 起業のきっかけは?

父が創業した会社を、息子から見て「この人がいなくなった時、この会社はどうなるんだろう」と、大きな不安を感じていました。父親が作った「会社」という舞台に乗った自分たちはその下の舞台創りを全然理解してないですよね。であればその舞台を作る所から「自分でやってみよう」とずっと思っていました。もうひとつは色々な地方に行って農業者の実態を見て行く中で、高齢者だけでキツイ作業をやらざるを得ない現状を見た時に「これは若者がやらなきゃいけない」=「自分もまだ若者じゃないか!」って思いました。このふたつが一番大きな理由だと思います。

Q2 起業して一番苦労したことは?

起業してからは、僕は苦労していませんね。自分の好きなスタイルでやらせて頂いているので。今まで知らなかった資金繰りの事などで「おー!こんなに急にお金が足らなくなるものなのか!」とか、それを「苦労」と言うのであればそうかもしれませんし、他人から見たら、自分も苦労している方なのかもしれません。でも、それらを「苦労」と言ってしまえば元も子も無いんで、僕は「苦労」としてカウントしないです。

image

Q3 経営者と従業員の
違いや魅力は?

経営者となることで、自分の好きなスタイルで一から事業展開を出来るというのが経営者の魅力ですね。と言うかそれしかないですね。逆に、前の質問にもお答えしましたが、資金面での舵取りが難しいと感じています。行政の支援で「新規就農者雇用制度」というものをうちでも使わせて頂いていたのですが、制度適用が終わった後は、めちゃめちゃキツかったですね。ですが、結論から言うと満たされてはいないですが、非常にありがたい制度でしたね。

❶❷生産された農産物は新鮮そのもの。収穫された後は丁寧に仕分け・梱包されて消費者の元へと送り届けられる❸奥の水槽にはチョウザメ。「アクアポニックス」という技術を用いて、クレソンを栽培。チョウザメの排泄物が栄養になる

Q4 挑戦しつづけられる理由は?

理論的には僕は「農業というのは職業ではなく、宗教みたいなものだ」と思っています。そもそも入信した僕には辞める理由がない。会社が潰れても、農業をやっていると思います。きっと。もうひとつの理由は反骨精神ですね。事業で成功した父の息子である僕が起業した時に、色々な所からたくさん批判も受けたのですが、それに対して「くそ、絶対に儲かるようにしてやる!」という気持ちが原動力としてありますね。

Q5 御社の事業の魅力は?

農業の魅力で言うと、健康になった事です。以前営業をやっていた頃は子供を抱いて階段を上がるのもゼイゼイしていたのが、全く息が切れなくなりましたし、引っかかっていた健康診断もすべてクリーンになりました。ご飯もいっぱい食べられますしね。これってコメ問題にも直結していますよね。僕みたいな人間が増えてくれば、米の消費量が圧倒的に伸びるわけです。農業者が増える=健康な人が増える。医療問題、コメ問題も解決する。「健康で長生きできる」それってすごく良い事だと思います。

Q6 現在の事業ノウハウの基盤は
どこで培いましたか?

父はひたすら仕事に打ち込む人だったのですが、それを見て育った僕もバッチリその通りになっていました。幼い頃、直接農業に触れる機会はなかったのですが、そんな父に連れて行かれた旅行は会社の出張と一緒でした。山形のスイカ畑でしたね。遊園地の代わりにスイカ畑に連れて行かれたりするわけです。でも、それが面白かったんです。そのように知らず知らずのうちに染み込んだ何かがあるのかもしれません。

Q7 地域とのつながり、意義は?

地域とのつながり、それが全てですね。畑を借りる場合でも、地域のポイントとなる方々といっぱい会話をして、良い関係を構築出来ると、勝手に口コミでバンバン広げてくれます。畑として借りたくなるような土地の情報は地元の方のコミュニティが一番早くて、一番新鮮です。そこを押さえていなかったら、僕らにとって望ましい環境の畑は見つからなかったですね。これって実は農業生産だけではなく産地開発や仲卸しビジネスにおいて「生産者とのコミュニケーション」という根本的なものに繋がると思います。

Q8 千葉県で起業する魅力は?

農業においては、千葉は消費地に近い。これは圧倒的に魅力ですね。野菜の場合、物流コストというものは直接生産者の手取り収入に影響を与えているので、今後大きな問題になって行くと思います。地産地消においても、上手な仕組みを構築できれば千葉県においては充分に成り立つと思います。生産面においても千葉は温暖な地域で、僕がやっている富里の北総台地は富士山の火山灰土のようですが、土が良質なんです。ある程度何でも作れます。それも含めて東京という消費地に近い生産地という物流的メリットが理由としてはナンバーワンですね。

Q9 これから起業を考えている方に
メッセージをお願いします。

お金儲けのためだけに起業してしまうと、辛くなってしまうかもしれません。その事業をやる理由をしっかり持っていないと、おそらく精神的に耐えられなくなってしまうのではないでしょうか。「儲からないけど、こういうものなんだ」という理由って大事ではないかと思います。要するに企業理念をしっかりと設定して、発信する。そして、それをずっと追い求めるべきだと思います。

好きな漢字は?

「 農 」
会社のテーマでもある「エキサイティングな農業革命を起こし農と言える日本へ」にも入っているこの文字にしました。

影響を受けた本、おすすめの本は?

「容疑者Xの献身」/東野圭吾 著
本を読むきっかけとなった本です。話の根底を根こそぎずらすという部分がとても好きで。その部分はある意味ビジネスにも置き換えられると思います。

オンとオフの切り分け方は?

オフが嫌いなのでできるだけオンでいたいです。しいて言えば家に帰ってビールを飲む時にわくわくする時がオフになりますかね。

千葉で注目している起業家、経営者は?

千葉の経営者では株式会社ネットショップ総研の創業者で社外取締役もやってもらっているのですが、HPを作ってくれている長山衛君ですね。彼は私があった経営者の中では一番発想がぶっ飛んでいるなと思います。