創業家ではないからこそ持てる視点。
自らと会社を冷静に分析し目前の課題に
適切なアプローチを続ける“理論派勝負師”。
【プロフィール】箕輪 晃(みのわ あきら)
1969年設立。大手チェーン店などの看板をはじめ、地元プロ野球球団の本拠地スタジアムの看板など数々の施工を手がける。企画からデザイン・設置施工・アフターケアに至るまで自社一貫体制で行っているのが同社の特徴。近年では「若い世代の社員が最前線で活躍している企業こそが伸びる」という考え方の下、大卒者の新卒採用にも力を入れている。平成30年度千葉県経営革新優秀企業表彰 最優秀企業賞受賞。
Q1 起業のきっかけは?
私は、元々自動車販売の営業をやっていたのですが、成績に応じて報酬が変わるので、多い月もあればあまり頂けない時もありました。ある時、会社が合併する事をきっかけに転職を決意、あまりメジャーではない業種の方が自分の営業力を活かせるのではないかと思い、協同工芸社に入社しました。2011年、創業者の息子である長塚公章が社長になり、私が専務になりました。その3年後、「もう少し会社を成長させよう」という考えから、仕事の役割の棲み分けをして、長塚が新規事業の立ち上げに関する事やインターネット関連の役割を担い、私が本体の経営面など実務に関連する業務を担うという形で私が社長に就任し、長塚が会長になりました。私は創業家とは血縁関係がありません。そういう人間だからこそ持てる視点がある。創業家の会長とそうでない社長、という体制は色々な意味で有利だと考えました。元々、社長になる予定はなかったのですが、長塚と供に「従業員に優しい会社」を作りたいという想いもあって、就任を決意しました。
Q2 起業して一番苦労したことは?
協同工芸社では、これから業務の中心を担っていくであろう30代前半くらいの世代の社員を、毎月会計事務所に通わせ、月次決算を見て、今ある課題をどのようにクリアすれば良いかという事を話し合うんです。その取り組みの中で、私も30歳を過ぎた頃からそういう勉強をしていました。なので、数字上の事は社長就任の時にはできるようになっていたのですが、人材の面で課題に直面しました。大学進学率が高くなった現代において、今までは専門学生の採用が基軸だったものを「大学生に軸足を移さなければ」と思い、2011年から大卒の新卒採用に力を入れ始めました。基本、私達の会社の離職率は低いのですが、3期生が入社した時、会社が急成長の波に乗り、急激に業務も拡大、複雑化していきました。その結果、16名の採用社員がわずか1年で10名くらい辞めてしまって。これは、彼らが悪いのではなくて、急成長する会社に体制が追い付かなかった事が原因だと思います。
Q3 経営者と従業員の
違いや魅力は?
経営者と従業員では、求められる能力が根本的に大きく異なると思います。雇用される側は、「1を10にする」のが仕事。経営者は、「0を1にする」のが仕事。私は多分、冷静に見ても今の経営者の方が能力的に向いていると思っています。
❶大学のキャンパスに高さ1mを超える巨大な立体文字をずらりと並べました。オブジェの前では記念写真をパチリ。生徒たちの人気を集めています❷プロ野球「千葉ロッテマリーンズ」本拠地であるZOZOマリンスタジアムにシンボルのカモメを描いたサインを設置しました。夜間は文字が光るので形をくっきりと表現し印象付けることができます。
Q4 挑戦しつづけられる理由は?
理由というか、失敗を恐れたら何もできないので、とにかく色々な事に挑戦するべきだと思っています。そもそも経営って、ギャンブル性がある物なんですよね(笑)。やはり、投資に対して、リターンがあるかないかという世界なので。じゃあ「何もやらない」という事が良い事かというと決してそうではなく、変化にどう対応していくかという事を常に考えながら、機を見て、チャレンジする時は思い切りやる事が大切なんだと思います。
Q5 御社の事業の魅力は?
やはり「形に残る」という事もあるのですが、「スピード感」ですね。例えば、東京スカイツリー。あれは計画から施工まですごく時間がかかったと思うのですが、看板は長くても1か月くらいで形になります。さらに、機械でプレスして量産で作っている訳ではなく、ひとつひとつ違う物なので、自分で色々考えながら作らないといけない。ですから、作る人やデザインする人に「設計する裁量権」が与えられるので、自分が生み出した物が世の中に出るという事が魅力だと思います。
Q6 現在の事業ノウハウの基盤は
どこで培いましたか?
私が入社した時は営業をしていて、それから代表になる前には工場のトップとして工程管理業務を3年間やっていました。その時に、色々な工程のノウハウを1から勉強しましたね。私達の業界にとっては作業よりも段取りの方が重要です。段取りの方がよっぽど難しいですね。会社としても、工程管理に関しては、工夫に工夫を重ねています。
Q7 地域とのつながり、意義は?
弊社の中で千葉県内の案件は全体の15%くらいです。一番多いのは東京ですね。私達のお客様のメインは、やはり東京のチェーン店本部や本社なんです。本当はもっと千葉県の仕事をしたいんですけど。あとは、地域の繋がりとしては地元の人、特に女性を雇用していきたいと思っています。千葉県のひとつの欠点というのが、四大卒女子の就職先が少ない事だと私は思っているんです。特に千葉市より南や東など、少し田舎の方にずれた場所では顕著に現れていると思います。そこを解決していきたいですよね。
Q8 千葉県で起業する魅力は?
千葉は、工場を建てるにしても出店するにしても、とにかくまずコストが安くて済みますし、しかも人口が多いので人員確保にもあまり困る事がありません。また、この辺は高速道路も近いので陸路が大変便利です。起業する段階としては、千葉県はとても良いコンディションの土地なのではないかと思います。
Q9 これから起業を考えている方に
メッセージをお願いします。
中小企業って、最初は「どうやったら商品が売れるのか」という事ばかり考えるんです。でも一番大事な事は「商品を磨く」という事。結局、商品が良ければ自ずとお客様が集まります。ふたつ目は「片腕になる人」、いずれナンバー2になる様な人材と出会う事。それは、育成するものではなくて、意外と出会うものなんですよね。3つ目は「怖がらない」という事。どうしても経
好きな漢字は?
「 聖 」
私がクリスチャンという事もあり、聖書の「聖」とか信仰の「信」などが思い付きますね。
影響を受けた本、おすすめの本は?
「破天荒フェニックス オンデーズ再生物語」田中 修治 著
最近読んでみて、面白かったです。実話を基にした小説なんですけど、結構ギャンブルな事もやっていましたね。
オンとオフの切り分け方は?
礼拝、ジムに行く
日曜日は教会に行って、日曜学校や礼拝に参加し、子供達と触れ合っています。日曜日は、完全に会社から切り離された世界に変わります。平日は、週に2~3回はジムに行き、運動をして気分転換をしています。
千葉で注目している起業家、経営者は?
株式会社 サン中央ホーム
代表取締役社長 工藤 圭司さん
耐震偽造事件の被害から優良企業へと立て直した事が素晴らしいです。
株式会社 諏訪商店 代表取締役 諏訪 寿一さん
私が社長になった時に、一番色々なアドバイスを頂きました。