家族の愛が広げたビジネスの礎。
社員への尊敬の念を常に忘れない精神で
前人未到の介護分野へ挑む“人徳の経営者”。

【プロフィール】渡辺 賢二(わたな べけんじ)

運送業を営む父親が脳梗塞で倒れ言語障害を患った事をきっかけに、言語機能の改善や認知機能の活性化を目的とした言語療法、学習療法特化型デイサービスを行う有限会社ミカタの設立へと繋がった。言語障害を持つ方を対象としたクラウド型のオリジナル学習コミュニケーション教材「脳楽習」を開発、全国に広がる同様の施設への導入が進んでいる。

Q1 起業のきっかけは?

私は、実家が運送業を営んでいたので両親の元で働いていたのですが、平成6年2月に父が脳梗塞で倒れて失語症になり、1年間入院するという出来事がありました。その際、入院先に当時国家資格が始まる前の言語ボランティアの方がいらっしゃって、父が言語のリハビリを受けたら、表情がみるみるうちに明るく変わっていくのを目の当たりにしました。当時、介護保険制度が始まる前でしたし、言語に特化したリハビリ施設もなかったので、父が退院した後に「親孝行したい」という想いから「父や同じ障害を持つ方に向けた言語デイサービスの介護事業所を自分でやってみよう」と思いました。色々な場所で勉強や修行を重ね、2004年に有限会社ミカタを設立し、2006年に『言語デイサービスミカタ松戸』を開設しました。

Q2 起業して一番苦労したことは?

資金繰りです。実は、開業時に事業のための物件をすぐに購入してしまったんです。それで、返済など資金繰りが大変になってしまって、運転資金を得るための融資を受けられなくなってしまいました。この通帳、当時の物なのですが7月7日の残高を見てください。16円(笑)。リアルに16円しかなかったんです。同じ日に、私が若い頃からかけていた保険も解約してしまいました。大型の入金があっても、すぐに返済で出ていく。本当の本当に自転車操業の日々でした。今でも手元にこの通帳を残しているのは、当時の事を忘れないため、「自分なら絶対にできる、成し遂げられる」と奮起させるためですね。

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Q3 経営者と従業員の
違いや魅力は?

お恥ずかしながら親の会社に勤めていたので、皆さんが思うような一般的な従業員としての経験はあまりなくて、「経営者と従業員の違いは?」と聞かれると、「全然分からない」というのが答えになってしまいます。ですが、「経営者と従業員、どちらに向いているか?」という質問であれば、「経営者」と答えられます。高校時代、部活でボートをやっていて、インターハイで優勝した事があるんです。その3年間、凄く厳しかったのですが、「体力」を付ける事ができました。体力があるから、大変な時も寝ずに仕事ができましたし、困難を乗り切れたと思います。

❶I C T 脳リハビリ教材『脳楽習』提供の様子。テーマは「昔の道具」❷タブレットを使用した双方向コミュニケーション形式の言語リハビリの様子

Q4 挑戦しつづけられる理由は?

「利用者様の笑顔」と「仲間である社員がいてくれる」という事が原動力です。自分が介護を始めたばかりの頃、訪問介護で利用者様のお宅に行って、料理を作る事があったんです。料理なんて全くやった事がなかったのに、利用者様に作り方を教えて頂きながら、お味噌汁を作ってお出ししたら「ありがとう」って言われたんです。これが衝撃的でした。お給料も頂いて、作り方も教えて頂いたのに感謝される。こんなに素晴らしい事はありません。また、私は自分の会社の社員から色々な事を学びましたし、人の温かさに触れる事ができたと思っています。現場が、毎日事故なく業務を行えている事も、社員のおかげだと思っています。経営と現場は全く違うと思うので、私は社員を尊敬しています。自分を支えてきてくれたのも社員ですし、社員を守っていかなければというか、「恩返し」をしていきたいと思っています。

Q5 御社の事業の魅力は?

やはり、利用者様に「ありがとう」と言って頂けるのが魅力です。介護業界で働く方は、毎日が奉仕と言いますか、人生の大先輩である利用者様に尊敬の気持ちを持って仕事をしていると思います。なので、本当の意味で「生き甲斐」「やり甲斐」を感じる事ができるのもありますね。

Q6 現在の事業ノウハウの基盤は
どこで培いましたか?

お手本も無いし、教科書も無い分野だったので、手探りでやっていったという感じですね。言語に特化した介護福祉施設って、自分が起業した時は全然なかったので。自分が「親にこういう風にしてあげたい」という希望を社員が汲み取って、介護保険に則ってどのような事ができるのかというのを考えて試行錯誤しました。

Q7 地域とのつながり、意義は?

2018年2月に、松戸市より社会福祉法人の認可を受け「社会福祉法人鷹見会」を新設する事になりました。言語リハビリを提供する「言語デイサービス」というのは、全国でも約30か所程度と圧倒的に少数なのですが、当社の事業所は千葉県内でも4か所あり、千葉県に根差した事業展開をしています。社会福祉法人の認可を受けるためには、「唯一無二」である事が必要とされています。今後も更に地域貢献できるように、サービスの充実に努めていきたいと考えています。

Q8 千葉県で起業する魅力は?

千葉での起業の魅力、これは県商工労働部、地元の商工会議所、千葉県産業振興センターなど支援機関の支援が充実している事にあると思います。私も支援機関の方に相談し、施策の紹介や支援、経営の基本など様々な事を勉強させて頂きました。

Q9 これから起業を考えている方に
メッセージをお願いします。

シンプルに「自分がしてもらって嬉しい事は皆さんにするし、自分が嫌な事はしない」だと思います。幼稚園で学ぶ事ですけど、これくらいしか私には言えないです。あとは是非、千葉にある支援機関をフル活用して頂きたいです。無料セミナーの開催なども活発ですし、異業種のセミナーでも積極的に参加し、勉強する事が大事だと思います。こういった支援機関の力を借りて、経営についてしっかりと勉強してから起業するというのもありかなと思いますね。

好きな漢字は?

「 漕 」
高校時代ボート部でした。この時に手に入れた体力があったお陰で、経営の難局を乗り越えられた場面がいくつもありました。

影響を受けた本、おすすめの本は?

「トム・ソーヤーの冒険」/マーク・トウェイン 著
僕はあまり本は読まないのですが、子供の頃に読んで随分とワクワクした記憶があります。アドベンチャーが好きなのかもしれませんね。

オンとオフの切り分け方は?

山歩き、ドライブ
トム・ソーヤーの冒険が好きなので、外に出かける事が大好きです。あと、実は友達が少なくて、ひとりでできる事が中心になってしまいますね。

千葉で注目している起業家、経営者は?

DSヘルスケアグループ
代表・CEO 寒竹 郁夫先生
先生は、私にとって幼い頃に夢中で見ていたTVのヒーローそのものです。先生には、優しく暖かいお言葉をかけて頂いてパワーを頂いております。