創業130年の歴史を次の世代へ。理論に基づいた経営ビジョンを打ち出し観光酪農界の刷新を目指す若き経営者。

株式会社秋葉牧場 代表取締役社長 秋葉 秀威(あきば ひでたけ)

明治20年創業の秋葉牧場8代目。事業の主軸は酪農・観光(「成田ゆめ牧場」の運営)。高校生の時に事業承継を決意。大手企業のサラリーマンとして営業や経理の実績を積む。平成21年、英国に渡りMBAを取得。その後、スイスホテルマネジメントスクールでホスピタリティを学び、シンガポールの五つ星ホテルで実践を積んだ。平成25年、株式会社秋葉牧場に入社。平成30年に代表取締役社長に就任。

Q1 事業承継のきっかけは?

 「跡を継ぐ」と決意したのは高校生の時です。当時、父が愛読していた日経ビジネスの記事を読むと、名だたる経営者には必ず「営業」と「経理」の経験がありました。30歳までに事業を承継すると想定し、そこから逆算するとやるべき道筋が見えました。大学卒業後、実際に営業、経理の実績を積み、「会社」というものを多角的視点で捉えることができるようになりました。世界を意識していましたので、英国でMBA取得をしたり、シンガポールの5つ星ホテルでホスピタリティを身に着ける経験を積んだんです。そして平成25年に秋葉牧場に入社し、平成30年に代表取締役に就任しました。

Q2 一番苦労したことは?

 代表取締役への就任後、一番心がけていたのは「社員やスタッフに対しての自分の言葉に誠実であること」です。今まで父が積み重ねてきたこの牧場を私の何気ない一言でオセロのように変えてしまう可能性があるのではないか、と慎重になっていました。リーダーが変わるということは、働いている方にとって、方向性やスピード、負荷のかかり具合も全く変わってしまうということですよね。私の一言や判断により、良い方向にも悪い方向にも組織が動いていくという重みを感じました。「後継する」ってこういうことなんでしょうね。
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Q3 起業家・経営者と雇用される生き方の違いや魅力は何ですか?

 「現場のスタッフ」「管理職」「社長」、それぞれ会社のひとつの役割だと思っているので生き方の違いというのはあまり感じないですね。ただ、できること、できないことで言うと、経営者は会社のビジョンとして向こう20年、100年先の方向性を示すことができるという点です。数十年先の未来や、この地域をどうしていくか、という広い視点でのビジョンを持つというところに、大きな魅力を感じますね。

【事業内容1】
2018年に導入した「ゆめこちゃんのキッチンカー」。酪農家が作る牧場ジェラートなどを日本各地で販売。高速道路を疾駆するその姿はインパクト大!

【事業内容2】
搾乳牧場の創業は1887年。基幹はあくまでも酪農であり、生産~製造~販売まで一貫できるのが強み。酪農家減少という時勢にあって更なる飼養頭数拡大を期している

現状維持ではなく前進しないと会社は守れないと思うんです。そのための危機感は常に持っていますね。

Q4 その上で、挑戦しつづけられる理由は何ですか?

 挑戦し続けられる理由は「危機感」です。秋葉牧場は先代の経営努力と、父と母が築き上げた盤石な経営基盤で、地域に根差した企業となりました。私の代で会社の事業規模をもっと拡大したいという想いはもちろんありますし、仮に会社が傾くようなことがあれば先祖に対しても顔向けできない。現状維持ではなく前進しないと会社は守れないと思うんです。そのための危機感は常に持っていますね。進み続けないと崩れてしまう。成長は無いと理解しているので。背中を押しているのは危機感です。

Q5 現在実施されている事業の魅力は何ですか?

 事業の柱は、観光・酪農・店舗運営です。観光面では、自然の素晴らしさをお客様に伝えられること。のびのびと大声を出せる環境をご提供できることは魅力です。同時に、外に対してもっと発信したいと思い、一石三鳥で動かせる事業をどんどん生み出そうと。そのひとつが牛型のキッチンカーです。音楽フェス会場等に出店し、ツイッターでは7~8万件のリツイートをいただくほど、国内外で話題になりました。市場に合わせながら付加価値をつけて伝えていく。こちらから出向くので、その都度お客様の層が違いますし、様々な出会いがあって面白いですね。

Q6 現在の事業のノウハウの基盤は何ですか?

 「常に牛をそばに置きなさい」という父の教えがあります。酪農業は日々の積み重ねの成果です。「じっくり待つ」という経営手法なんですね。スピードと成果主義の中で生きてきた私にとって、大切な教えです。同時に違和感や不足している部分に気付くことができた。そこでエッセンスとしてPDC(プラン・ドゥ・チェック)を取り入れました。その結果、大きな変化を実感しましたね。会社全体が「いつまでにやるか」ということを意識するようになりました。目標に向かうスピードと、牛を大事に育てながら経営をしていくこと。すべての経験は有意義なものでした。

Q7 地域とのつながりはありますか?その意義は何ですか?

 酪農業は横のつながり、地域のつながりがないと成り立ちません。当社では県内酪農家と共同農地の管理や、雇用の創出、また新設のセントラルキッチンでは地産地消の食材を取り入れる等しています。地域経済が安定し、人が根付き、子育て環境が整う。そして次世代に繋いでいく。地域循環を波及させていく役割を担う中心的な会社にならないといけない。その使命感は大きいです。

Q8 ちば起業の魅力は何ですか?

 千葉は恵まれた環境ですよね。国際空港があり、地理的に水産業、農業もありますし、もちろん都市部もある。すべてが一通り揃っています。お客様も都心部から来ていただきやすい環境にありますし、それに対して地産地消で出せる商品がある。加えて、観光資源も豊富ですので、最大限、千葉の資源を活用し、魅力発信を継続すれば、多様な経済が生まれると思っています。逆に言うと絞り込めないというジレンマもありますので、そこは一つひとつテーマを決めて深堀りしていくと面白いものができるんじゃないかと。

Q9 これから起業を考えている方にメッセージをお願いします。

 事業承継してよかったことは、社会に貢献できているという実感を持てること。地域に根差した事業を承継することは、その街の経済を安定させるという社会的責任を伴います。地域に対して何ができるか、どんな出会いがあるのか、それを自分で切り拓けるというのは、経営者の面白いところです。ぜひ挑戦してください。多少の困難は努力で解決できます。心配事があれば、一つひとつ書き出して、潰していけばいい。そうして前に進むということが非常に大事なことです。
会社名 株式会社秋葉牧場
電話番号 〔成田ゆめ牧場〕0476-96-1001
現在の年商 20億円
従業員数 73名
業 種 農林水産鉱業/旅行・宿泊・レジャー
事業概要 酪農業/乳製品製造業/菓子製造業/観光事業/飲食物販事業
所在地 〔本 社〕千葉県八千代市緑が丘 2-2-10
〔成田ゆめ牧場〕千葉県成田市名木 730-3
H P https://www.yumebokujo.com/

好きな漢字は?

「心」  経済活動は利益の追求に偏りがちですが、「心」を忘れず判断を誤らないように。

影響を受けた本は?

方法序説/デカルト 著
成長の原理/上原春男 著

オンとオフの切り替え方は?

常にオンです。日常生活の中で感じたことを形にする日常を送ることが会社にとって大事。毎日会社のことを考えています。

千葉で注目している起業家、経営者は?

アヅマ株式会社/代表取締役社長 山崎克哉 氏
習志野化工株式会社/代表取締役社長 中山博之 氏
協友工業株式会社/代表取締役社長 角谷太一 氏