創業から100年、そして次の100年へ
医薬品流通で地域と医療を“つなぐ”
治療・予防・健康維持のプラットフォーマー
岩渕薬品株式会社 代表取締役社長 岩渕 琢磨
1914年(大正3年)の創業から、地元千葉県を中心に医療の最前線と製薬メーカーを結ぶ医薬品卸売業として代々経営。医薬品卸売事業を中心とした健康に関わる製品やサービスの提供を行っている。大学卒業後、国内大手製薬メーカーに入社し、MRを8年経験。2011年に、岩渕薬品株式会社に入社。令和元年に事業承継し、代表取締役社長に就任。Q1 事業承継のきっかけは?
いつかは「後継する」という環境で育ちましたので、大学卒業後は家業と最も関連性がある国内製薬メーカーに入社し、MRを8年間経験しました。当社が創業100周年を迎えるタイミングで、社員と一緒に新たなスタートを切りたいと思い、2011年に入社し、その後、2019年に代表取締役社長に就任しました。変化の激しい時代ですから、会社自体新たなステージへ、今まで以上のスピードで進んでいかなければいけないタイミングでしたので、世代交代をしました。Q2 一番苦労したことは?
社長就任前に着手した人事制度の見直しです。当社は歴史がある分上下関係が強く、また、年功序列の風土があったことは否めません。こうした状況を変えるべく、実力がある社員を正しく評価できる成果主義への変革が必要であり、そのために人事制度を段階的に変えていったのですが、これにより組織の新陳代謝が図られました。同時に、先に入社した弟がこれからの会社を担っていきたい社員に対して「でてこいやセミナー」という研修を通じた人材育成を進めていたことも大きいですね。組織の新陳代謝と人材育成がうまくマッチしたことで組織は変わることが出来ました。Q3 起業家・経営者と雇用される生き方の違いや魅力は何ですか?
経営者の魅力は「責任」と「やりがい」ではないでしょうか。社長就任時に「この難しい時代に若くして社長就任は大変だね」と言われました。私自身、この難局を乗り切り単独経営を貫くことがミッションだと考えていますが、難しい時代だからこそ腹をくくって思い切りやっていきたいと考えています。当社は歴史と、多くの方との繋がりがある会社です。多くの方とのご縁がご縁を呼んで繋がっていく。その強みをいかし新たな領域へチャレンジしていくことで、この難局を乗り切りたいですね。Q4 その上で、挑戦しつづけられる理由は何ですか?
バトンを預かった時から次の代へそのバトンをいい形で渡す事を考えていますし、それが私の役割です。計り知れない重圧もありますが、続けることが価値であると信じています。私がバトンを渡す時には、地域密着でやってきた強みを生かしつつ、既存の事業領域だけでなく全国・海外との取引といった活動の場を広げておきたいですね。さらに「ネクスト100年」に向けて創業から百年分の感謝を一つずつお返しして、それを積み上げ恩返ししていきたい。それが挑戦し続けられる理由です。【本社1階にある物流センターの様子】
千葉県一帯を対象とした物流網の基幹となる当センターには、常時1万アイテムを超える医療用医薬品が保管されている。
【戦後の岩渕商店の様子】
1914年3月、「地域の健康を支えたい」という現在の理念に通ずる思いから、岩渕剛はこの地で創業を果たした。
「会社があって、社員がいて、自分がある」
常日頃から意識しています。
Q5 現在実施されている事業の魅力は何ですか?
理念である「健康」を通じた様々な貢献が実現できることではないでしょうか。当社では、医薬品卸売事業を中心とした健康に関わる製品やサービスの提供を行っていますが、卸売業は、医薬品メーカーと違い、すべての製品ラインナップの中から顧客に寄り添ったご提案ができ、医薬品流通を通して世の中の健康に貢献していることが最大の魅力です。また、医療費抑制や早期発見・早期治療、重症化予防にも取り組んでいます。さらに健康維持や予防に事業領域を広げ、企業向けに従業員の健康管理を行うヘルスケアアプリケーション『LEAF』をITベンチャーと共同開発しました。『LEAF』は栄養、睡眠、ストレス等、様々な健康課題を解決するためのプラットフォームへと成長すべく、複数の企業との連携を進めています。Q6 現在の事業のノウハウの基盤は何ですか?
ノウハウというよりは、原動力なのですが、先輩たちへの感謝です。当社が100年以上の歴史があるのは、お客様や地域の方に支えて頂いていたからです。そしてもちろん社員がいたから今があるんですね。父には幼い頃から「休みの日も社員は働いてるんだぞ」と教えられていましたから。「会社があって、社員がいて、自分がある」ということを常日頃から意識しています。だからこそ会社や従業員、地域に認められるよう日々精進することが出来るんだと思います。Q7 地域とのつながりはありますか?その意義は何ですか?
当社は地域医療の潤滑油として、「つなぐ」ということが得意な会社です。地域をまわると多くの課題があることに気が付きます。約6年前には地域医療推進室という部署を立ち上げました。課題をイメージしてビジョンを語ると、同じ思いや熱量を持った人たちと繋がって大きな力になることを実感しています。経済産業省より地域未来牽引企業に選定して頂きましたが、地域とともに歩んできた当社としては、地域貢献は今後も続けていきます。Q8 ちば起業の魅力は何ですか?
千葉には素晴らしい商品やサービスをお持ちの県内メーカーや企業が多くありますから、業界の垣根を越えてイノベーションを起こす可能性を多分に秘めています。例えば、当社の事業を通じて健康意識が高まった結果として生まれたニーズを明確化すれば、そのニーズに合わせて県内メーカーの健康商品やサービスをマッチングさせることが出来ます。千葉には、そんな新しいイノベーションを生み出せるポテンシャルがあると感じています。Q9 これから起業を考えている方にメッセージをお願いします。
コロナ下でどの業界も新しいチャレンジで、この困難を乗り越えなければという機運が高まっていますから、他業界とのマッチングやコラボレーション、イノベーションを起こすには絶好の機会です。どんどん起業して頂いて、現状ある課題を解決していければと思います。熱い想いをもった経営者と是非お話ししたいですね。経営者同士でディスカッションできることは有意義で刺激的な事ですし、人生が面白いものになると思うので、一人でも多くの方に起業してほしいです。一度きりの人生、思いっきりやりましょう。Q10 今後の展望、ビジョンをお聞かせください。
既存の医療機関のお客様に対しては、薬の情報と薬をお届けする面だけでなく、コンサルティング機能を発揮し、経営のサポートにも力を注いで行きたいと考えています。一方で、県内の異業種の企業様に対しては、『健康経営』という新たなサービスをご提案・展開し、先々はBtoBからBtoCへの展開も目指しています。そのためには、自治体と連携して地域の課題、特に健康課題にアクセスし、一人でも多くの方の健康に貢献できるような仕組みやシステムを構築しているところです。好きな漢字は?
「炎」 よく皆さんから「熱い人」といって頂いているので、「燃え尽きる」という意味でも炎ですかね(笑)影響を受けた本は?
鬼滅の刃/吾峠呼世晴 著人生一度きりだから思い切りやりたいと思いますし、そういう組織づくりを心がけています。
オンとオフの切り替え方は?
仕事は切りなくあるので、オフにしないとずっとオンですね(笑)。オンとオフの切り替えは大事で、オフの時は欠かさず「筋トレ」をしていますし、自然の中に身を置いて「サーフィン」をする時間も大切にしています。千葉で注目している起業家、経営者は?
●株式会社千葉測器 代表取締役社長 中村 卓見さん●株式会社拓匠開発 代表取締役 工藤 英之さん
●石井食品株式会社 代表取締役社長執行役員 石井 智康さん