父の知人から母へ薬局開業のお話をいただいたのが弊社の起業のきっかけです。幼い頃から両親が協力して働く姿は身近で、自宅でのスタッフや関係者との打ち合わせや、両親が交代で私や兄弟の育児をしながら夜まで仕事というのも当たり前の家庭でした。女性社長として全力で仕事に取り組んでいる一方で、多忙でも愛情深く育ててくれた母は、誇らしく眩しくもあり、私にとってはロールモデルでした。起業時から困難があったとしても常に輝く未来を語り合う両親の姿、次第に大所帯になっていく過程を間近で見てきたので、自身の将来を考えた時、私の中での選択肢はこの業界しかありませんでした。自ら望んで、納得の上で事業承継に至っています。もしかして「うまくレールに乗った」のかもしれませんが、乗せられた感じはありません。

会社が30周年を迎えた2018年頃、両親から近い将来、経営を任せたいとの話がありました。私自身もいつかは継承できる力をつけたいと考えてはいましたが、この時、初めて具体的に覚悟を固めました。でも、いざ継承を目前にしたとき、創業者である二人の功績の大きさに、私で大丈夫かと不安に。当時は入社9年目で、社内の約9割が私より年長、薬剤師としても社会人としても経験値が上という状況で、果たして社員を引っ張っていけるのかとプレッシャーを感じていました。しかし、両親が「本当に優秀なスタッフが揃っている」と、多方面で話をしていたことを思い出し、「だったら私はその優秀なスタッフがいるチームのリーダーとして、私らしく精一杯の努力で歩んでいけばいい」と発想を変えた途端に少しだけ肩の力が抜けました。

薬剤師は医療人として命に係わる仕事。どんな立場でも常に責任をもって業務にあたり、患者様の健康に寄与できるというやりがいは変わりありません。しかし、経営者は店舗で起きたことのすべてにおいて責任を取る必要があります。その点では責任の大きさが違うため、その責任の重大さに挫けそうになることも。その一方で、ビジョンや目標を自ら意志決定し、それをスタッフに伝え、形にしてもらえた時の喜び、達成感、やりがいというのは、経営者だからこそ得られるものだと感じています。スタッフが失敗してしまった時はスタッフ以上に辛く悲しいのですが、反対にスタッフが何かをやり遂げたり、お褒めの声をいただけた時などは、自分のこと以上に嬉しくなります。２８１人分の感動をもらえるのが経営者だと実感しています。

この世に生を受けてから死ぬまで一度も怪我もせず病気に罹らないことが一番ですがそうはいきません。私たちは薬局業務を通してより地域の皆様の健康で安心な暮らしを支え、笑顔を提供することを理念としその目的達成のために日々地道に努力を積み重ねています。その中で保険制度の変革やAIやDXの発達で、薬局の在り方も変化し薬剤師の役割も問われてきました。しかし絶対にAIやDXではできないこと、人にしかできないことは、相手の心に寄り添い、100人100通りの想いに応えることではないでしょうか。そのために、機械化できるところは積極的に導入して、これまで以上に患者様への対人業務に時間を振り向け薬局の存在価値を高めたいです。

千葉は東京に隣接するベッドタウンであり、工業地帯があり、大型テーマパークに代表される観光、さらに自然があふれている。また幕張メッセのようなビジネスサテライトの顔や農業、漁業もさかん。色んな顔を持っていると思います。それゆえに「これ！」といった特徴がないのも千葉県かなと。ただ、だからこそ何かをやりたいと思ったときには、ビジネスチャンスが周りにあふれているのが千葉の魅力でしょうか。また、弊社の基盤となっている松戸市や柏市、流山市は民官をあげて子育て支援にとても力を入れています。医療は圧倒的に女性が多い職場なので、子育てのためのインフラが整っているのはありがたいです。女性が活躍するためのサポートは一企業の努力だけでは両立はむずかしいですから。

創業時から、両親が大事にしてきた地元の医療機関や他業界の方との繋がりがご縁で、共に歩んでいただける医療機関の門前で約1年に1店舗のペースで店舗数が増加しています。今年は初の試みとして、災害時の拠点となる、千葉県総合救急災害医療センターの敷地内に店舗を開設。病院関係者と常に連携し、災害時にも地域医療に貢献出来る薬局を目指しています。また、2018年に母が中心となり、「一般社団法人 子供プラス未来」を立ち上げ、病気や障がい、経済的困難を抱える子どもと家族を支援する活動をしています。SDGｓの一環として全面的にこの活動に協力し、家庭内で使いきれない食品、未使用の玩具や雑貨等を寄付いただく箱を薬局内に設置したり、それらを配布するコミュニティとしての役割を果たしています。

これから歩んでいく仕事に対して、熱い熱量、揺るがない思いを持ち、そして自分が選んだ道をぶれずに信じることが大切です。岐路に立った時私は、自分から見てここは太陽が当たっているなというところを選択するように心がけています。太陽が当たっているところというのはその時の自分にとって明るい展望が抱けるところということです。もちろん思い描いていた結果を得られないことは多々あります。それでもその時の選択を絶対に後悔しないようにしています。たとえ想像していなかった結果であってもその過程には必ず意味がある、それが失敗であって道草になったとしても次に進むためのエネルギーと糧になる。とにかくポジティブな発想に変換するように心がけてみてはいかがでしょうか。