チョウシ・チアーズ株式会社 代表取締役 佐久間 快枝 チョウシ・チアーズ株式会社 代表取締役 佐久間 快枝

「地域に愛される100年ブランドをつくる」を掲げ、銚子のクラフトビール醸造所から世界進出へ挑む

チョウシ・チアーズ株式会社 
代表取締役  佐久間 快枝
(さくま よしえ)

千葉県銚子市出身。学生時代はアメリカの大学で学び、帰国後、外資系企業などで勤務。出産を機に生まれ育った銚子市に戻り、クラフトビール製造会社を設立。
銚子市内で地元食材を使ったメニューと一緒にビールを楽しむことができる「銚子ビール藤兵衛醸造所 Choshi Good Beer Cafe」の開店や、銚子ビール初のCampfireクラウドファンディングなど、地域活性化のために様々なことに挑戦しつづけている。2020年には、日本財団「海と日本PROJECT」とのコラボレーションを実現。重要文化財の登録となった犬吠埼灯台をモチーフに開発した「犬吠WHITE IPA」「犬吠Black IPA」の販売を開始。売上の一部は灯台を守る活動に寄付している。
また、『地域に愛される100年ブランドをつくる』を目指している。

Q1.

起業のきっかけは?

実家が飲食店で自営業の親の背中を見て育ち、いつかは自分も事業に挑戦してみたいと思っていました。大学を卒業後、東京で外資系IT企業などに勤めたのですが、出産で地元へ戻る機会も増えると、なじみの店が次々と閉店するなど、街に活気がなくなっているのが気になりました。自分の育った街が大変なことになっている、ここで何か自分にできることはないかと考え、銚子に人が呼べるフラッグシップになることを始めようと。そこで思いついたのが、アメリカ出張時に目の当たりにしたクラフトビールブーム。小さな町の醸造所に人々が集う様子が印象的でした。また、実家が酒販店も経営していて酒小売免許があるからビール醸造もできる。私の知見と実家のリソース、そして子育てに伴うライフステージの変化がうまくリンクしました。

Q2.

起業時で一番苦労したことや
ターニングポイントなどをお聞かせください。

日本でも醸造所が各地に次々とできてはいましたが、銚子ではほとんど認知度がなく、本当に商売になるのか不安でした。いきなり醸造所をつくるのでなくOEMでスタート。ブランディングをしながら醸造所に義務付けられた年間の最低醸造量をOEM製品の販売目標値に設定し、ひたすらセールスをして、なんとか見込みが得られました。また、地元にはすんなりと受け入れてもらえるものだと思っていましたが、当初は相当な軋轢がありました。銚子の人からすれば、東京帰りの女性がいきなり銚子ビールをつくると浮かれているように見えたのでしょう。街を盛り上げる事業だといっても、いろいろな見方や感じ方をする人がいることがわかり勉強になりました。ただ、必死にやれば、その姿を見て応援してくださる人が多いのも実感しています。

Q3.

起業家・経営者と雇用される生き方の
違いや魅力は何ですか?

起業家はすべてを自分で決められますが、それとトレードオフになっているのがリスクかもしれません。ただ、自分で自分の道を切り開いていけるのは最大の利点です。私も長らく雇用される立場でしたが、安定とのトレードオフが我慢や不自由さだと思っていました。会社で新規事業を立ち上げようとすれば、プレゼンをして稟議をしてもらい、アイデアを通す必要があります。自分ではこの方向がベストだと思っても、トップの一声で思うようにいかないこともあります。私自身は、任された仕事は120%の力で形にしてきましたが、心のどこかで息苦しさを感じていました。やりたいことの反対側にリスクなどいろんなことがありますが、今は同じようにトレードオフの自由さの中で戦っている起業家の仲間たちの輪に入って楽しくやっています。

事業内容1

【事業内容1】

「銚子ビール藤兵衛醸造所」は、200年以上地域と共にあった代表佐久間の実家である「藤兵衛」本店の暖簾を継承し2023年にオープン。チョウシグッドビール・カフェ(ChoshiGoodBeerCafe)を併設し、つくりたてのフレッシュな銚子ビールを提供している。

事業内容2

【事業内容2】

銚子ビール藤兵衛醸造所内の醸造設備。より多くのみなさんに届けるための醸造量が可能な設備や、味わいをそのままに冷蔵宅配でき、リサイクル率の高い缶での提供ができる充填機を整備し、街も地球もチョウシよくするサステナブルワリーに近づく手段にもなると考えている。

自分に制限をかけているのは自分だと思うんです。だからその枠をひとつ超えたところを常に考えていきたいですね。

Q4.

ビジネスを通して、解決したい社会課題や
地域課題についてお聞かせください。

 私が高校生だった30年以上前には、銚子にデパートが2つあって、人口も10万人近くでした。それが、今はなじみのお店がなくなったり、人口も6万人を切ったりしています。それでも、銚子はいろいろなものがある魅力的な町だと思うんです。屏風ヶ浦に代表される絶景があって、美しい海も川もある。食料自給率は銚子市単体だと240%にもなります。住んでいる人たちは豊かなことに慣れていて、自分たちがいろんな可能性を持っていることに気付いていないんです。こういった資源とビールを掛け算するだけで銚子ビールが生まれ、みなさんがそこにストーリーを感じて訪ねて来てくれる。そうやって掛け算をして、どんどんモノ・コトを作っていけば、銚子には無限の可能性があるんです。そして、持続可能な町にしていくには、アップサイクルだとか地域のためにできることをしなくちゃいけない。その一環と して、ビールをつくったあとに出るモルト粕は非常に栄養価が高いので、畜産家に牛の餌として利用してもらって肉質の向上に役立ててもらう。あるいは、地域の発酵料理研究家に「モルトエナジーバー」というお菓子を開発してもらい、販売しています。アップサイクルでできることをする、例えば、「犬吠」や「灯台」ネーミングが付く商品は、その周辺をキレイにするプロジェクトに関わっている方々に売上の1%を寄付しているんです。また、ビールの容器を約97%リサイクルできるアルミ缶を主力にしたり、醸造所の電力を再生可能エネルギーで賄ったりするなど、サスティナブルブリュワリーを目指しています。

Q5.

あなたが考えるこれからの世の中や目指す
社会についてビジョンをお聞かせください。

今までならば田舎で成功したら都会にアンテナショップを持つのが一般的でしたが、最近は日本の田舎の次に海外へ進出するケースも見かけます。だから、今世界がすごく近くなっている。私のかつての仕事仲間が世界各地にいて、進出したらと気軽に声をかけてくれることもあるんです。まずは自分たちが海外でビールを売ってみるとか、向こうで醸造所を持つとか、いろんな可能性がありますし、働いている人たちも海外支店で働けるとなれば楽しいですよね。自分に制限をかけているのは自分だと思うんです。だからその枠をひとつ超えたところを常に考えていきたいですね。何事もやっては駄目な理由はない、と思って実現させていくつもりですし、これから海外マーケットにも挑戦していきたいと思います。

Q6.

千葉で起業・経営する魅力や
千葉への想いについてお聞かせください。

千葉は平野でたくさんの野菜を栽培していたり、漁業も盛んで県全体でも自給率が非常に高いです。千葉は土壌がよいので、様々なよいものが育つんです。でもそれが当たり前すぎて、千葉の人たちは言わない。日本の台所を支えているのは千葉県です、と言ってもいいくらいですよね。また、世界に飛び立てる空港もあれば海も近い。日本の真ん中あたりで、どこへでも行ける位置にあります。だからやれることももっとあるはずです。例えば、地理的に不利な立ち位置の起業家をつなぐ、助けることもできます。千葉が担うハブ的な役割はもっとあると思うんです。東京は過密すぎますが、千葉は適度になんでも揃っている。千葉のポテンシャルはすごく高いと思います。

Q7.

地域とのつながりや連携等はありますか?
また、その意義についてお聞かせください。

醸造所という場を、地域の皆さんの集う場所にして、いろいろな使い方を考えてもらって、地域の課題を解決していけるカンパニーになりたいと思っています。ここには醸造をやりたい仲間たちが集まって事業をしているだけでなく、集う場はあるのでどうぞ使って何かしてください、という中から地域のママたちが集まって地域食堂が始まりました。また、ドキュメンタリー映画の上映会をやりたいという話が持ち上がったときは、主催が学校だと上映料が安くなるから、私が面識のある千葉科学大学の学長さんに話を持ちかけて実現しました。みんなが考える場を持つことで、私が一人で全部やらなくても、したいことを考え、実行してくれる仲間がどんどん増えてきました。

Q8.

これから起業を考えている方や
起業間もない
経営者へメッセージを
お願いします。

とにかく、どうやったらうまくいくかだけを常に考えていれば、必ず突破口は見つかります。私が先輩の起業家の方から言われたのは、「絶対に諦めなければ、打ち手は無数にある」ということ。まだ、これから起業される方なら、壁にはまだぶち当たってはいないかもしれませんが、事業が絶対にうまくいくというマインドセットと、どんな課題が発生してもどうやったらうまくいくかを常に考えていれば、必ず自分が到達したい目標までいけると思うので頑張ってください。もし何か調子良くなりたいときは、ぜひここ銚子に来てください。

会社名
チョウシ・チアーズ株式会社
電話番号
0479-21-2986
現在の資本金
1,095万円
現在の年商
4,900万円
従業員数
7名
業 種
メーカー(食品)・小売・外食
事業概要
酒類製造業、酒類販売業、
飲食店経営、食料品・物販の販売
所在地
千葉県銚子市垣根町1-283
H P
https://choshicheers.sakuraweb.com/
好きな漢字は?「快」
常にこれを目指しています。「イコール銚子GOOD」ということなんですよね。街も世界も調子良い街にしようという意味で好きです。
オンとオフの切り替え方は?
強制的にオンからオフにするには子供の存在ですね。子供たちとの時間をつくるということが、唯一、オンとオフの切り替えポイントかなと思います。
影響を受けた本は?
  • ビジネス・フォー・パンクス/ジェームズ・ワット 著
  • 使命の本質/松島 修 著
  • 7つの習慣
    /スティーブン・R・コヴィー 著
千葉で注目している起業家、経営者は?
  • 株式会社wash-plus 代表取締役 高梨 健太郎さん
  • Hennery Farm 代表 坂尾 英彦さん
生年月日
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1971年11月22日
起業年
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2018年
起業スタイル
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会社員から
スタートメンバー
…………
友人・知人

2023年12月現在