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「医療の倫理と企業の論理の融合」を理念に
医療の産業化とグローバル展開を手掛ける

訪問歯科診療のパイオニアとして全国に展開する、日本最大の歯科医療グループ「DSヘルスケアグループ」。高齢社会を支えるために、医科と介護にも事業領域を広げ「歯科・医科・介護のワンストップサービス」の提供を行っている。医療の産業化とグローバル展開にも積極的に着手し、現在はドバイにある歯科・医科併設クリニックを拠点に、中東・東南アジアを中心に活動するなど、新たな可能性に挑戦し続けている。

<プロフィール>寒竹 郁夫

1957年、東京都出身。日本大学大学院卒業。歯科医師・歯学博士。歯科医師として自ら訪問歯科診療に取り組む中、デンタルサポート株式会社を立ち上げ、企業が訪問歯科診療をフルサポートするという、日本初のビジネススキームを構築して全国に展開する。2015年4月に医療機関と株式会社の複合体である、DSヘルスケアグループ代表・CEOに就任。歯科医療を原点とし、医科・介護も提供するグループとして国内外に活動領域を広げている。

Q1 起業のきっかけは?

1987年に稲毛海岸で「寒竹歯科医院」を開院したのが始まりです。転機はその後の97年から始めた訪問歯科診療。当時は積極的に訪問歯科診療に取り組む歯科医師はほとんどいませんでした。訪問歯科診療の対象は「常時寝たきり、またはそれに準ずる方」なので、何らかの疾患を持っていますし、リスクが高いと思われていました。
知人の看護師の要請で初めて訪問歯科診療を行ったとき、外来とは違う充実感を得ました。社会的意義やこれからの高齢社会に向かって需要が増大するであろうことを確信して、デンタルサポート株式会社を立ち上げ、医療機関の訪問歯科診療を企業でフルサポートする事業に着手したのです。医療と企業が両輪となって機能するビジネススキームを構築し、すべてのエネルギーをそれに集中させました。

Q2 起業して一番苦労したことは?

それまで自分が身を置いていた医療の世界は、国の制度に守られた世界でした。株式会社の世界はそうはいかない。市場原理にさらされる。良くも悪くも多くの洗礼を受けました。
その中で様々な人に出会いましたが、いかに良い人材に出会えるか、グループに来てもらえるかは、苦労というよりテーマです。国内も海外も拠点を増やしていくには、人がいないと何も始まりません。

Q3 経営者と雇用される側の違いや魅力は?

ひと言でいえば責任の重さがまるで違います。事業、人、金などすべての責任が経営者にかかってきます。ですが私にとってはそれが魅力であり、醍醐味です。やめたいと思ったことはありません。
経営者になることによって見えてくる世界があります。安穏ではありませんが、常にワクワクする気持ちを持って挑むことができる世界です。

Q4 挑戦しつづけられる理由は?

夢があると、どんな障壁も乗り越えられます。夢があるから苦難は気にならない。
その根底にあるのは、過去に自分が努力をした、逃げずに頑張った経験ではないかと思います。努力をすれば夢は実現する。でも、実を結ばない努力もあります。どんなに頑張っても駄目なこともある。そこでいかに理不尽な努力を積み重ねることができるか、やり通すことができるか、それが自分の力になります。
夢を持つことと同じくらい大切なのは、心と体を鍛えること。ギリギリに追い込まれたとき、最後にものをいうのは精神力と体力です。

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訪問歯科診療(施設)
車椅子に座ったままの状態の患者さんを歯科医師が診療

Q5 御社の事業の魅力は?

高齢社会のニーズと合致して、訪問歯科診療は成果を上げることができました。その基盤を広げると同時に、医科と介護も連携させた取り組みを行っています。グループの中に歯科・医科・介護のすべてが揃っているということは、国の縮図でもあり、グループの中で直面する問題を解決することは、国が抱える問題解決のヒントになりえます。
また、自分が医療従事者であるからこそ、医療の産業化が必要だと言い続けてきました。国内だけに目を向けるのではなく、海外には大きな市場があります。特に日本の歯科医療・歯科技工の技術は世界でもトップクラスで、実際にグローバル展開をしていると、いかに日本の医療技術が求められているかを肌で感じることができます。国の政策も医療の産業化を織り込んできているなか、歯科・医科・介護のフィールドを持ち、医療機関と株式会社の複合体であるDSヘルスケアグループの強みを、これからより活かせると思っています。

Q6現在の事業ノウハウの基盤はどこで培いましたか?

坂本竜馬や織田信長といった歴史上の人物たちから人生哲学を学びました。29歳で歯科医院を開院しましたが、元々は研究者になろうと思っていて開業医になるつもりはなかったのです。なったからには「日本一の歯科グループをつくろう」「この先の40年、自分にしかできないことをやり遂げよう」と思いました。
講演会などで、織田信長の戦略と自分の事業を照らし合わせて話すことがあるのですが、すべての答えは歴史の中に書いてあります。日本の歴史の中で優れた指導者の思想や戦略はどのようなものだったのか、失敗の要因は何だったのかを学ぶことは大切だと思います。

Q7 地域とのつながり、意義は?

千葉で育ったグループですから、やはり千葉に恩返しというか、貢献をしたい。地域への貢献は個人ができることも多くありますが、企業・団体でなければできないこともたくさんあります。経済を支えること、雇用を創出することなどの他に、損得抜きで地域の発展のために力を尽くそうと、中小企業家を中心としたグループをつくって活動をしています。

Q8 千葉県で起業する魅力は?

千葉県は起業家を支援し受け入れる土壌があり、とても雰囲気が良い。また、都心に近く、海も山もあり自然が豊か、工業も盛んと好条件がそろっています。
先日のレッドブル・エアレースのように新しいことにチャレンジする精神もあり、街がどんどん進化していく中に、たくさんのビジネスチャンスがあります。

Q9 これから起業を考えている方にメッセージをお願いします。

一度しかない人生ですからチャレンジしてください。若いうちは変に大人びたり、リスクや失敗を恐れたりしないでほしい。最初から成功する人なんていません。失敗の方が多いと思います。9敗しても1勝できれば、それで良いのです。
自分にしかできないこと、本気でチャレンジできるようなワクワクすることを見つけてください。

好きな漢字は?

松下村塾で吉田松陰が教えたのはわずか2年半。その短期間に松陰から「夢」を教わった弟子たちが今の日本の礎を築きました。

影響を受けた本、おすすめの本は?

1.『世界最終戦争論-文明と戦争の大潮流を解く』/馬野周二 著
石原莞爾の書を元にした本で、世の中がどう動いていくかが論理的に書かれています。
2.『織田信長』/山岡荘八 著
20代後半で読み、事業をするうえで基礎となる多くのことを学びました。
3.『永遠の0』/百田尚樹 著
ここ数年で最も感動した小説。ブレイク前から人に薦めていました。

千葉で注目している起業家、経営者は?

「ビィー・トランセホールディングス株式会社」の代表取締役、吉田平。以前から親しくさせてもらっていて、とにかく前向きで経営者としての才能に溢れています。存在が目立つところも素晴らしい。どこまで挑戦を続けるのか、とても楽しみにしています。

オンとオフの切り分け方は?

松下村塾で吉田松陰が教えたのはわずか2年半。その短期間に松陰から「夢」を教わった弟子たちが今の日本の礎を築きました。オフの日は登山、マウンテンバイクなど体を動かします。それと週2回はボクシングジムに通っています。アマチュアですがスパーリングの試合には毎年出場しています。プロと一緒にトレーニングするのは刺激になるし、何より目的があると練習に励めます。

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