世界が認めた精密研磨技術を
手掛けて14年
経営者としての成長が
事業拡大の礎に
1938年に世界初のダイヤモンド研磨技術を生み出したケメット。その日本総代理店「ケメット・ジャパン株式会社」は2002年、現代表の滝川聡氏によって設立された。同社が扱うのは研磨装置や研磨資材といった、様々な工業産業分野で欠く事のできない精密研磨技術。近年は積極的にM&Aによる企業買収を実施し、事業間のシナジー効果による新事業を展開。日本とアジア圏を中心に、さらなる高みへの挑戦を続けている。
【プロフィール】滝川 聡(たきかわ さとし)
1965年、愛知県出身。貿易業を営む父の元に生まれ、幼い頃から海外文化に触れる事が多かった。高校時代には、見識を広げようとアメリカへ1年留学。大学卒業後に就職した商社では国内勤務がメインだったため、わずか1年で貿易商社に転職し、アメリカやタイなどを駆け回る日々が続く。1990年代初頭、日本へ初参入したケメット社製品の販売代理業に抜擢され、国内での市場を次々に開拓。2002年にケメット・ジャパン株式会社を設立した。
Q1 起業のきっかけは?
2002年にケメットの日本法人を立ち上げるという話が出ました。10年ほど国内の販売窓口としてやってきた自負もありましたし、シンガポールとイギリスのふたつの現地法人にお世話になっていたため、私なりの恩返しをしたいと思いまして。実際に国内市場はだいぶ成熟していましたから、日本法人代表に名乗り出ました。それが37歳の時です。
Q2 起業して一番苦労したことは?
ケメットというブランドが確実に浸透していたので、起業前後で苦労したという記憶はありません。取引先や海外法人からの援助に自己資金をプラスして、比較的スムーズに起業できました。設立からしばらくは私と専務の2人で会社をまわし、そのうち経理や総務の専任が必要になってきた事もあり初年度が終わる頃には従業員を3人ほど追加採用しました。
Q3 経営者と雇用される側の
違いや魅力は?
責任の面において、サラリーマンとは全く違う世界です。従業員を食べさせていくのは大前提で、何事においても責任を取る立場にあるのが経営者です。創業9年目で売上が約10億円になった時に次の経営ビジョンが見え、多くの経営者に倣ってセミナーや勉強会に参加するようになりました。成長著しい企業がどんなビジョンを持っているのか知りたかったのです。結局は、ぶれない経営理念で時の流れに順応できた企業が成長できるのだと知りました。貴重な気づきの瞬間でした。その頃はまだ1社経営で従業員は20人ほど。振り返れば事業を拡大する事だけに目が向き、従業員の気持ちは二の次でした。創業からずっと利己を追い求めてしまった事を反省しました。あれから経営者としての学びを続け、今は利他の精神が備わってきたように思います。国内外にある4つの関連企業を合わせると、今は120人ほどの規模となりました。理念経営を軸に、従業員ひとりひとりの幸せを実現するのが私の目標です。
Q4 挑戦しつづけられる理由は?
いろいろな学びや気づきを経て分かったのは、従業員がやりがいを持って働ける職場にしたいという想いが私の原動力です。それなりの課題やプレッシャーもありますが自分の使命を果たすためには、経営者は健全な心でいなければなりません。ですからマインドフルネスという瞑想を取り入れたりエニアグラムを実践したりと、常に心が穏やかで健全でいられるように心掛けています。リーマン・ショックで売上が落ち込んだ時期、辞めていく従業員もいました。その時に気づいたのが1社1事業ではリスクが高すぎるという事。これからは収入源を増やして経営を安定化させる必要があると。そこからM&Aを行うようになり、ハードディスク業界では世界1位のシェアを誇っていたシステム精工株式会社など4社を買収。最近では企業間のシナジー効果も生まれ、新たな事業が始まろうとしています。
Q5 御社の事業の魅力は?
グローバルな視点でビジネスを考え、最先端の製品を世に送り出せるのが魅力です。今年に入って買収した鉄道車輛工業株式会社の製造する脱臭装置もその一つです。今後は換気システム、消音設備も販売アイテムに加え、環境設備の総合デパートとして弊社グループ会社のネットワークを利用し、国内外のお客様に我々の技術をお届けしたい意向です。
Q6 現在の事業ノウハウの基盤は
どこで培いましたか?
私たちは単に物を売るのではなく、技術を価値に変えていく事が使命です。弊社のテクニカルセンターには60台の研磨装置があり、消耗資材の違いやプロセスなどを直接見学してもらいます。実際に稼働した状態でのパフォーマンスを確認していただく事で、より正確なご提案ができますし、お客様も納得した上で商談を進めることができます。
Q7 地域とのつながり、意義は?
東京の品川で創業し、千葉に来たのは12年ほど前ですね。今年は企業と各大学と組んで進めているFSP(future skills project)※1で、県下の学生に良い職に就いてほしいという思いから東京情報大学でお手伝いをさせていただいております。
Q8 千葉県で起業する魅力は?
例えば都内でメガバンクとお付き合いするよりも、千葉では銀行と密になれます。銀行側も地元企業に対する熱意がありますから、賀詞交換会などで頭取さんとお会いできたり。メガバンクだったら考えられない事です。千葉銀行さんにご支援いただき2020年の上場を目指しています。
Q9 これから起業を考えている方に
メッセージをお願いします。
本当に起業したいと考えているなら、いろんな経験ができますから早い方がいいと思います。もちろん設立資金など最低限の準備をしてからですが。経営者向けの勉強会やセミナーも充実していますし、やりながら勉強を続けていけば成長も早いはずです。会社を大きく成長させたいなら、信頼の置けるビジネスパートナーも必要でしょう。ご自身の理念やビジョンに共感してくれる仲間を見つけ、次の世代へと継続させていく事が、社会貢献という意味でも肝心です。経営者はとにかく一生学びです。
好きな漢字は?
「 志 」
経営に限らず何事も、志がないと前向きになれません。大きな志を持って前へ進んでください。“Boys be ambitious”です。
影響を受けた本、おすすめの本は?
「ザ・ミッション 人生の目的の見つけ方」
ドクター・ジョン・F・ディマティーニ著
どうやって人は生き、なぜ今のポジションにいるのかを客観的に捉える事で、確固たるビジョンを構築するのが目的だと教わりました。自分の進むべき道を教えてくれる、とても貴重な1冊です。
「夜と霧 新版」/ヴィクトール・E・フランクル著
オンとオフの切り分け方は?
両親がペナンに住んでいる事もあり、休暇が取れたら家族で海外へ行きます。ジムでのトレーニングやバンド活動なども私にとっては息抜きになりますし、夢中になる事で気持ちをリセットする事ができます。
千葉で注目している起業家、経営者は?
かつての私のように“行け行けどんどん”。今急成長を遂げている不動産事業経営の株式会社レオ・コーポレーション吉村太佑さん。上場を目指して奮闘中のMITホールディングス株式会社の鈴木浩さん。YAMAテック株式会社の阿部社長。株式会社協和ハウジングの内山社長です。