株式会社ピーターパン 取締役会長 横手 和彦 Model03株式会社ピーターパン 取締役会長 横手 和彦 Model03

驚異の集客力で
業界トップの売上を誇る
スーパーベーカリーを実現した
地域密着経営

創業から40年近くの間、地元住民に愛され続けるベーカリーチェーン「ピーターパン」。同社のコンセプトは「ちょっと贅沢、ちょっとおしゃれな食文化提供業」。焼きたてのパン、コーヒーの無料サービスなど、従来のベーカリーショップにはない発想が人気を呼び、行列のできるベーカリーとしてメディアにも度々取り上げられる。2015年11月には鎌ヶ谷「小麦の郷店」にて、1日のメロンパン販売数9,749個でギネス世界記録を樹立した。

【プロフィール】横手 和彦(よこて かずひこ)

1943年、広島県出身。地元信用金庫を2年余りで退職。27歳で東京・青山に「レストランクラブぎんなん」を開業して、飲食店経営者のキャリアをスタートさせる。その後33歳で一念発起してパン業界に転身し、1978年に「ピーターパン」を創業。その後は宅配ピザのフランチャイズなど時流に合わせた店舗展開を推し進め、現在は船橋、市川など6店舗で年商18億円強という驚異の経営手腕は業界内外から注目されている。2016年4月から取締役会長に就任。

Q1 起業のきっかけは?

青山で飲食店を経営していたある日、風邪で妻が寝込んでしまったので子ども達を仕事場へ連れて行きました。常連さんと酒を飲んで談笑している私を見ていた娘が翌日、「パパって全然仕事していないのね」と言ったのがショックで。それで子どもが喜んでくれる仕事にしようと決意しました。知り合いの紹介でパン屋さんを紹介してもらい、20代の若者と一緒に修業を始めました。当初は3年間の約束でしたが、無謀にもわずか半年で独立し「ピーターパン」を開業しました。

Q2 起業して一番苦労したことは?

やはりというか、創業してすぐにパン製造技術の未熟さを痛感しました。お客様に申し訳ないという気持ちから、「①他店より良い材料を使う」「②他店より誠心誠意働く」「③一生パンの勉強を続ける」という3つの誓いを実践。未熟でも美味しいパンで喜んでもらおうと思い、パンに使うあんこ、カスタード、カレーは手作りにこだわりました。結果的にそれが私の店の付加価値と認識され、お客様も次第に増えていったわけです。

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Q3 経営者と雇用される側の
違いや魅力は?

経営者は責任の大きさが違います。それは、私の判断次第では社員とその家族を路頭に迷わす事にもなるのですから。そして会社が大きくなると、より使命感が芽生えるので、責任と使命感はいつも頭にあります。10年ほど前の話ですが、事業承継を考えた時にM&Aの道を選択しそうになったことがありました。妻は賛成してくれたので本格的に話を進めようと思った矢先、娘から「会社を売るという事は会社の理念を売るという意味だ。お父さんを信じてくれている従業員を裏切る事になる」と言われ、素直にパンに捧げてきた人生と理念を売ってしまうのは情けないと娘に告白しました。すると「ならば私が継ぐ!」と言ってくれ、2016年4月に事業承継を行いました。因果なもので、起業のきっかけをくれた娘がM&Aを思いとどまらせてくれたわけです。

Q4 挑戦しつづけられる理由は?

今まで沢山の方々に育てていただいたと感じています。だから今度は私が人に良い影響を与えていきたいと思っています。私の経営哲学は3つのステップで表します。ひとつ目は“WILL”、自分は何がしたいのかを考えよ。次に“MUST”、そのために何をするべきか考えよ。最後は“CAN”、そのために自分には何ができるかを考えよ。これを繰り返し考えると自分の夢への道筋ができます。このメソッドは新入社員に必ず教えています。

Q5 御社の事業の魅力は?

スタッフ皆が笑顔で働いている事と、地域のお客様に愛されているなと実感できる事です。ホスピタリティの精神を第一に掲げ、店ではスタッフとお客様が非常に近い関係を築いています。街のパン屋さんなのに「○○さんからパンを買いたい」と言われるほど。その原点は1999年に「小麦工房」を開いた時のスタッフの言葉です。創業から20年ほどの間に、私はすっかり金儲けしか頭にない経営者になっていて、ずっと独断で店づくりを進めていました。どんな店にしたいかをスタッフに聞くと、製造員さんは「僕らは焼きたてのパンを提供したい」、販売員さんは「お客様と笑顔の交換ができる店にしたい」と。私の“WILL”は、彼らが伸び伸びと楽しく働ける職場を作る事だと決まりました。創業当時にやっていた“お客様のための経営”をもう一度やってみようと。

Q6 現在の事業ノウハウの基盤は
どこで培いましたか?

30年ほど前からは経営者勉強会に参加しています。経営者の人生観、仕事観、社会観などを学ぶと経営の勘所が見えてきますし、自分の目線が変わっていくのが分かります。若い頃に読んだ本を読み返すと、あの時とは全然違う角度から入ってくるんです。

Q7 地域とのつながり、意義は?

競合店が次々とオープンし先行きの不安を覚えた頃、私は船橋に両親の墓を建てました。墓を置くというのは、その土地の人間になるという意味があります。広島で生まれ東京で育ったよそ者が、ようやく千葉に根をおろした瞬間です。不思議ですが自分は千葉県人であると意識したとたん、地域の人たちとの繋がりがどんどん増え、事業は大きく飛躍しました。

Q8 千葉県で起業する魅力は?

人口の多さと地価の安さです。私たちの事業規模なら地域の一番店という立ち位置を狙っていけます。これは「ランチェスターの法則」を見ても明らかで、中小企業は大手にはできない戦略を立てる必要があります。飲食業に限らず、地域に根付いた会社というスタンスでいくのが得策だと思います。

Q9 これから起業を考えている方に
メッセージをお願いします。

起業する前にもう一度、ご自分の“WILL”を確かめてください。私は「小麦工房」創業時、社員が楽しく働けて、お客様に喜んでもらえる店づくりを自分の”WILL“にしました。すると社員の気持ちと結果が結びつき業績もあがっていったのです。もし“WILL”がお金ならば、それを何のために使うかをよく考えてください。私欲だけでは潰れてしまいますから。もうひとつは富山の薬売りで知られる先義後利という精神です。儲けようと思ったら儲からないものです。

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好きな漢字は?

「和」
会社を運営していく上で大切なのは組織力、チームワークです。和をもって良好な人間関係を築いていってほしいという願いを込めました。

影響を受けた本、おすすめの本は?

「食堂の経営技術革命」/渥美俊一著
「食堂の数字」/藪下雅治著

発行されてすぐに読んだのですが、全く忘れていました。10年後サイゼリヤの正垣会長の勉強会で学んだことがこの本とそっくりだったことに驚き、運を掴む人は素晴らしい理論だと思ったら即実行するのだと教えられました。

オンとオフの切り分け方は?

風呂を出た後ビールを飲みながら、サスペンスドラマや映画を観る事です。大抵は最後まで観ずに寝てしまいますが。休日はパンの製造技術から職場環境のノウハウなど多岐に渡る社内勉強会を開いています。

千葉で注目している起業家、経営者は?

株式会社エグチの江口秀雄さん。私とほぼ同時期に創業されて、様々な逆境を乗り越えて会社を大きくされた方です。彼こそ真の経営者と言っていいでしょう。あとは、幼児教育のスペシャリストであるエンゼルガーデンの市川由貴子さんも注目しています。