まくら株式会社 代表取締役 河元 智行 Model06まくら株式会社 代表取締役 河元 智行 Model06

自分に合う枕を求めて
ビジネスを構築した
枕・寝具のネット通販業界の
常勝軍団

枕のポータルサイトを原点に、枕800点と寝具35,000点を扱う大手寝具通販サイト「枕と眠りのおやすみショップ」などを運営。起業時から自社製品の開発にも力を入れ、昨年から落花生の殻枕や九十九里の塩枕などを使用した「ご当地枕」を発表。過去の販売に基づいた自動発注システムが評価され「経済産業省IT経営力大賞2012」昨年は自社サイト運営ノウハウを活用したネットショップ支援事業への参入が評価され「千葉県経営革新優秀企業知事表彰 最優秀企業賞」を受賞。

【プロフィール】河元 智行(かわもと ともゆき)

1975年、我孫子市出身。学生時代に宅地建物取引士(宅建)に合格し、不動産会社に就職が決まるが卒業間際に内定を辞退し自身で広告業を立ち上げる。大手に買収されたのを機に、都内の某家電量販店の携帯電話セールススタッフになり、トップ販売員に成長する。その頃からサイト制作を趣味で始め、携帯電話や家電量販店の裏ワザ情報を発信するように。後年、枕のポータルサイトを始めた事がきっかけとなり、ネット通販事業まくら株式会社を設立する。

Q1 起業のきっかけは?

2002年、当時話題だった低反発枕を購入しました。これでぐっすり眠れると安心したのも束の間、枕を変えたとたん首は痛いし寝付けないし、仕事にも支障をきたすほどに。人間工学に基づいた理想の低反発枕が自分には合わなかったわけです。それから7~8個の枕を購入しましたが、どれもしっくりこない。唯一得たものは「自分の布団でゆっくり試し寝してみないと、合う枕なんて見つからない」という教訓でした。そこで消費者目線で枕の特徴や選び方などを紹介するサイトを公開し、すぐにそのサイトが話題に。枕メーカーさんから新商品リリースが届くようになりました。今でいうコンテンツマーケティングの走りです。2003年に大手プロバイダー「nifty」が主催するホームページコンテストで準グランプリをいただき、その賞金を元手に2004年に枕の通販会社を立ち上げました。友人とふたりでのスタートだったので、とにかく在庫を持たない経営を心掛けました。注文が1点入ったらメーカーから1点仕入れて私が発送する、非常にシンプルで無駄のないシステムです。在庫を持たない経営は今も守り続けていることです。

Q2 起業して一番苦労したことは?

起業から1年ほどで売上もようやく安定した頃に、取り込み詐欺に遭いました。福井県にある会社から枕1点のオーダーが毎週のように入り始め、上得意様ができたと私は喜んでいたのですが…。ある金曜の夕方「急ぎで100万円分ほどの枕が欲しい。週明けには現物が必要」という連絡を受けました。信用しきっていた私はとにかく商品を送らなくてはと、代金を後払いにしてしまったんです。週が明けて何日待っても入金されない。心配になって電話すると通じません。すぐに福井県まで飛びましたが、その住所には誰もいなくて。起業して最も苦しかった出来事です。

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Q3 経営者と雇用される側の
違いや魅力は?

その仕事に誇りを感じ、楽しむ事ができればどちらの生き方も魅力的だと思います。経営者としての魅力は何かと問われたら、結局のところ「自己実現の欲」を叶えられる事でしょうか。やりたいと思った事に好きなだけ挑戦できるって、最高に素晴らしいですね。

Q4 挑戦しつづけられる理由は?

楽しいから。ただそれだけです。起業したばかりの頃は日々、目先の売上と作業に追われていたため楽しむ余裕などありませんでした。取り込み詐欺に遭った時はさすがに閉業を考えましたが、落ち込んでいる暇もなく注文が入り続け、梱包と発送を繰り返しているうちにここまで来たという感じです。そうやってお客様に支えてもらえたという事ですね。

Q5 御社の事業の魅力は?

枕は普及率100%で特に真新しい商品でもありません。ですが地球に重力があり、人間が直立歩行をし、そして人間に睡眠欲がある限りは絶対になくならない物です。さらに枕は、頭部といういわば人間の一等地を長時間にわたり占有できる唯一の存在で、スマホなどよりも断然身近です。この人間に最も近いポジションから、例えば枕が利用者の脈拍や体温を測定して病院にデータを送ったり、家電製品のスイッチ機能を持ったりと、無限の進化が見込めます。弊社では2012年から「枕ダントツ化計画」なる活動目標を立て、社員全員がもっと枕馬鹿になって、枕の可能性をもっと広げていくべく新商品を開発しています。

Q6 現在の事業ノウハウの基盤は
どこで培いましたか?

試行錯誤と失敗、改修をひたすら繰り返してノウハウを培いました。まずはサイトを公開し、ユーザーの動向を見ながら弱い部分の修正を重ねて。私の経験では、サイト全体の20%くらいが完成した時点で公開するものだと考えています。その代りに修正を素早くする。そうすればネットビジネスは成功します。

Q7 地域とのつながり、意義は?

千葉の特産品である落花生の殻を使った枕を開発しました。落花生の殻には消臭機能効果があるなど、非常に有能な素材です。県内の落花生農家では殻を全部廃棄しているというので、収穫期に大量の殻を調達して2015年9月に商品化しました。その後も、九十九里の塩を使った枕とチーバくんをモチーフにした枕をリリースしています。今後は、地域の資源や産品を使った「ご当地枕シリーズ」を開発していく予定です。

Q8 千葉県で起業する魅力は?

事務所を持つにしても家賃が低いのが魅力です。私の場合はネット通販ですから、都市部でやる必要はありませんでした。我孫子市で起業したのも、結果的には柏市などよりは家賃を抑えられた点が良かったと思います。

Q9 これから起業を考えている方に
メッセージをお願いします。

起業を考えている今の皆さんは、港を出ようとしている船です。私は12年前に小さな船で出港し、何度も壊れそうになっては港に戻って修復して、また海に出ました。行く先にどんな困難が待ち構えているかは分からないのだから、世の中に溢れている噂や情報ばかりを詰め込み過ぎて船が重くなってしまってはだめ。残念ながら、これをやれば成功するなんてセオリーはありません。どんなに小さな船でもまずは出港する事が重要で、失敗したらやり直せばいいのです。

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好きな漢字は?

「枕」
枕のような生き方、枕のような会社にしたいと思っています。派手な主張はないけれど、陰ながらそっとご主人様を支える存在ですから。

影響を受けた本、おすすめの本は?

「使える笑える裏ワザ大全」/河元智行著
携帯電話の販売員時代に始めた裏ワザサイトをまとめた本です。裏ワザと聞くと怪しい印象を受けるかもしれませんが、ひとつの事象を第2、第3の視点で伝えるセンスが養われます。そういう意味では今の事業にも役立っています。

オンとオフの切り分け方は?

オンとオフの意識はあまりないですが、オフの時は徹底的に休むようにしています。私は鉄道に乗る事が好きで、昨年は青森から鹿児島の枕崎まで鈍行列車で旅をしました。全国で唯一「枕」と名の付く枕崎駅。もちろん枕を持って記念写真を撮ってきました。

千葉で注目している起業家、経営者は?

私が最初に事務所を構えたわずか数坪の部屋を引き払う時に独立し、お風呂グッズ通販サイトで起業したバスリエ株式会社の松永武さん。バスリエからキッチングッズ通販サイトで独立したエコキッチン株式会社の柳川実さんです。今も定期的に会合を開いてはお互いに切磋琢磨しています。