株式会社BBStone デザイン心理学研究所 代表取締役社長 日比野 好恵 Model10株式会社BBStone デザイン心理学研究所 代表取締役社長 日比野 好恵 Model10

人間の直感、
潜在意識をリサーチし
科学的証拠に基づいた
デザインを提案

千葉大学工学部初のベンチャーとして2009年に設立。デザイン心理学の観点から人間の本音(内臓感覚)を取り入れた印象評価を数値化。「Evidence Based Design」をベースにした空間コンサルティングなどを得意としている。クライアントの9割が一部上場企業である事も大きな特徴で、2012年には「日経ビジネス2012 日本を救う次世代ベンチャー100」に選出。また同年には「グッドデザイン賞」を受賞するなど、国内外で数々の賞を獲得している。

【プロフィール】日比野 好恵(ひびの よしえ))

福岡県生まれ。横浜国立大学教育学部心理学科卒業。外資系企業勤務などを経て、2009年に株式会社BBStoneデザイン心理学研究所を設立。大学での研究を社会に還元し、ビジネスとして息を吹き込むという新たなロールモデルを構築。金融機関、官公庁、大手メーカーなど多業種を相手に、デザイン心理学に基づいた空間設計やプロダクトデザインを提案。その手腕が評価され、2015年「第4回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション」にて「DBJ女性起業優秀賞」を受賞。

Q1 起業のきっかけは?

ある日、日本橋駅のホームでひとりのおじいさんが出口を見失って立ち止まっていました。その方は駅の表示がよく読めずに右往左往しているのに、周りの人たちはその方を避けるように流れていくだけ。おじいさんに声を掛け目的の出口まで案内してあげたのですが、私の心の中にはモヤモヤが残ったままでした。 帰宅した私は主人に駅での出来事を話しました。「日本人はいつからこんなに冷たくなったのかしら」と。すると主人は「表示が分かりづらいのも原因だろう」と言うのです。その時初めて、主人が大学でデザイン心理学を研究している事を知りました。ならば主人の研究を社会に活かして、子どもから高齢者まで使いやすく見やすい表示を製品にしよう。そう思ったのが起業のきっかけです。

Q2 起業して一番苦労したことは?

千葉大工学部では初めてのベンチャー事業というプランでしたから、認定をいただくまでに2年もかかりました。日本ではまだ、大学の一研究室の成果をビジネスに使うという事に大きな抵抗があります。その間は主人や研究員の皆さんにも迷惑をかけましたし、私自身、何度も挫けてしまいそうになりました。

image

Q3 経営者と雇用される側の
違いや魅力は?

朝から晩まで休みなく仕事の事を考えるのが経営者です。特に私の場合は自宅にいても主人と顔を突き合わせるわけですからね。かつて会社に勤めていた頃は夕方5時になったら完全にオフ。そんな日常から一転、今は24時間ほとんどオン状態が続いています。 起業して間もない頃はストレスに感じたりもしましたが、2015年に「DBJ女性起業優秀賞」をいただいて私自身の考え方も変わったので、今はそれほどストレスと感じなくなりました。それに最近思うんですが、この年で何かに夢中になれるって本当はすごく幸せな事ですよね。

Q4 挑戦しつづけられる理由は?

現在は従業員への責任です。起業前のベンチャー申請が下りるまでも相当苦労しましたが、苦しいと思うと必ずと言っていいほど日本橋駅で出会ったおじいさんの姿が浮かぶんです。その度に「もう少しがんばろう」と踏ん張ってきました。

Q5 御社の事業の魅力は?

主人の研究分野を活かして多くのイノベーションを起こせる事です。人間の直感に基づいたデザインや空間コンサルティングをご提案するため、ジャンルに限りはありません。実際に、金融、教育、食品、交通など実に多彩な企業様からのご依頼があります。  大抵の場合、その企業様の方向性を決めるような重大な局面でのお話で。それに対して私たちはどんな検証を行うかというと、人が行動を起こす際の直感的な原動力…触りたい、見たい、買いたいといった内蔵感覚を拾い上げます。例えばアップル社の製品が「なんとなく持ちたいから」という風に感覚にリーチするのは、消費者の感情を汲み取った優秀なデザインだと言えます。 弊社が目指すのは、大学での研究成果を社会に活かす事と日本の物づくりに貢献する事です。この事業を始めて分かったのは、大学は宝の山である事。研究の成果を世に送り出すのが弊社の使命だと考えています。そうやって若手研究員たちが活躍できる場を提供していきたいですね。

Q6 現在の事業ノウハウの基盤は
どこで培いましたか?

学生時代に心理学を専攻していたものの、デザイン心理学については全くの素人でした。ですから個々のプロジェクトに参加しながら技術を学んでいったという感じです。会社経営に関しては、様々な局面で多くの経営者さんに助けてもらいました。不思議なもので、私が苦しんでいる時に、すっと誰かに手を差し伸べてもらってきたんです。何かあるたびに人の優しさに触れてきました。

Q7 地域とのつながり、意義は?

中小機構が千葉大の中に設置している「千葉大亥鼻イノベーションプラザ」で、家賃補助など様々な支援をいただいてきました。弊社は元々千葉大工学部の一研究室から生まれた会社ですからね、そういう意味でいろいろとバックアップをいただいています。

Q8 千葉県で起業する魅力は?

創業以来、千葉市には本当に助けてもらってきました。先ほどの「千葉大亥鼻イノベーションプラザ」のほかに、「Qiball(キボール)」にも入れてもらっていました。東京までのアクセスも良いですから、クライアントとの打ち合わせにもストレスなく移動できるのがいいですね。

Q9 これから起業を考えている方に
メッセージをお願いします。

先ずは「やめなさい」といいますね。なぜなら想定外の事やハプニングなど本当に毎日いろんな課題が次々に起き、もの凄く大変だからです。それでも起業したいと思うならばやるべきです。
課題はひとつずつクリアしていくしかありません。起業する際に一番大切なのは「この事業を成功させる!」という想いです。それがないとすぐに潰れてしまいますから。お金儲けや流行ばかりに気持ちが行っていると、足元をすくわれますのでお気を付けください。

株式会社BBStone デザイン心理学研究所

好きな漢字は?

「決」
これをやると決めたらすぐに実行する。経営者は日々いくつもの判断と決断、実行を繰り返していますから。

影響を受けた本、おすすめの本は?

「下町ロケット」/池井戸潤著
ドラマ化される前に原作本を読みました。職人のプライドと理想のギャップ、中小企業の悲哀など、日本の物づくりの現場をリアルに描いているところに感動し、よく泣かされたものです。

オンとオフの切り分け方は?

経営者になると常にオンの状態が続きます。愛犬と遊んでいる時が唯一、オフになる瞬間でしょうね。今は中国の闘犬、チャイニーズ・シャー・ペイを飼っています。あの独特な顔立ちが気に入ったもので。愛犬とふたりきりでお散歩に出掛けて、気分転換しています。

千葉で注目している起業家、経営者は?

株式会社PLUS-Yの永田洋子さんです。
「Qiball(キボール)」にいたときに永田さんに出会いました。今でもお世話になっています。